『ボクが殺されるところを耐えたこと?』
 ヒカリは口のあたりに手をやり、何か考えているようだった。
『そう…… ヤツは真琴を殺そうとしてきたのね』
 真琴はうなずいた。
『ボクははじめ、殺せはしない、と思っていた。それをしたら殺人だから、夢でないところで罪になってしまうからね。けれど、ボクにはヒカリがいるから、きっとボクを殺しても肉体は死ななかったんだね。そういう意味で、奴は本気だったのかも』
『わからない。エントーシアンが人を支配すると言っても、本当に体を奪って、生きることができるのかまでは……』
『ヒカリとして行きていけるか、わからないのね。とにかく、奴に見つからない方法で逃げることにしたの。あれは機械だった。まともにやりあったら勝てないのは途中で分かった』
 ヒカリは腕を組んだ。
『機械を倒す? 違う壊す方法も考えておかないとダメね』
『どうやって壊すの? だって機械なのよ、疲れないし、壊れところなんてないよ……』
『お祖父さんの機械は燃えたわよね』
 真琴は家にお祖父さんの山本昭一の機械があった時のことを思い出した。あの時はきっと、何か細工されて燃えたはずだ。
『機械に細工したらいいってこと? じゃあ、夢の中からは無理ね』
『あの時、機械は一定量の熱をもったら自動的に止まると言っていた。それを狙えばいい』
『そんなこと言ってたっけ?』
 真琴の言葉に、ヒカリは頭をかかえるような仕草をした。
『なによ! あんたに馬鹿にされるなんてっ……』
『そうよね。ごめん』
 慌てて真琴の言葉を遮り、ヒカリは両方の手のひらを向けて、抑えるようにと手を動かした。
『ふん! 知らない!』
『そういう手もあるってことさ。他にも何かあるかもしれないから考えてみる』
 ヒカリとの会話はそれで終わった。
 真琴は、今日もまた駅までの道のりを走ることになった。少しずつ体が慣れて、ヒカリが動かしても筋肉痛にならない肉体になっていった。
 駅につくと、ヒカリはスッと消えてどこかにいなくなった。同時に、真琴の頭痛も消えていた。
 中居寺のホームにつくと、薫が待っていた。
「おはよう」
「おはよう、真琴。あら、凄い汗ね…… ん? もしかして」
「うん。ここまで走ってきた」
 真琴は薫の目が濁ったように思えた。
 まばたきすると、薫は普段の表情に戻っていた。
「私の顔がどうかした?」
「ううん。なんでもない」
「気になるなぁ。顔のどこかにご飯粒でもついてるなら、舐め取ってよ」
「舐め取るの?」
 薫が腕を首にからめてきた。
「そうよ。ほら、ここに何か付いているでしょ?」
 薫は小さく口を開けて、中で少し舌を動かした。真琴は唇を合わせる直前まで行って、ここが駅であることに気づいた。
「あっ、ほら、次の電車だから並ぼうか」
「そうね。周りから変な目で見られちゃうもの」
 薫はそう言いながら周りに目を配った。
 そこには、いつものように女子生徒が集まっていて、真琴達のことを見ていたようだった。そして、薫が顔を向けた方向の生徒は、慌てて視線をそらした。
 薫が真琴の袖を引くので、体をかがめると、耳元に囁いた。
「(いつになったら駅でキスとかできるのかしら)」



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