「すみません。私には……」
「おねがい」
 更に頭を下げた。
 真琴はびっくりして、薫の肘つついた。
「(そんなに簡単に断らないで、すこし考えたら?)」
「(どのみち断らなければないらないのよ。そんなポーズするだけ無駄じゃない)」
 副会長の佐藤が、小刻みに震えている会長を抑えるように捕まえた。
「会長、やはり唐突すぎたのでは?」
「じゃあ、新野さん。あなたが立候補するの。いい? 決定よ!」
「ちょっと待ってください!!」
 真琴は佐藤の反対側から会長の腕を抑えた。
「生徒会長になれ、とは言ってない。立候補しろって言ったの。出来るでしょ?」
「薫のように優秀じゃないんです。無理です」
「だから生徒会長になれ、と言っているんじゃないの。立候補するだけ。もちろん、私は全力でバックアップするけれど」
「だから無理です」
 両手を振ってアピールするが、もう決めたと言わんばかりの一方的な発言が続く。
「新野さん、あなた実は人気あるのよ。この前の体育祭の練習の話も、元から注目されているからあれだけの騒ぎになるのよ。電車でも人を惹きつけているみたいだし、絶対に生徒会に入れるから。自身を持ちなさい」
「あの、ボク、自分の勉強で……」
「大丈夫、生徒会長なら内申書に書かれるから。しかも悪い方には転ばない。試験で10点プラスするのは大変だけど、生徒会って書かれてたら同じくらいの価値はあるわ」
 薫がニコニコ笑いかけている。
「私も応援するから」
「決まりね。早速根回ししとくから。今からあなたは生徒会長筆頭候補よ」
「いやです!」
 そう言ったものの、結局佐藤副会長になだめすかされながら、そのまま立候補していく流れに決まってしまった。
 佐藤さん曰く『どのみちこうやって生徒会室に出入りしていればそんなに生活が大きく変わることはない。返って静かな生徒会室を使って勉強が出来るから受験に有利』ということだった。
 体育祭の準備が終わると、真琴と薫は先に帰っていいと言われ、二人はそのまま校舎を出た。
「真琴が生徒会長なんてちょっと素敵だよね」
「ね、なんでそうなったんだっけ?」
「会長は自分の影響力を残したかったんじゃない? 体育祭が終わってしまえば半年もないけど、その間は学校にいるわけだし」
「影響力って……そんなに権力」
「生徒会を組む時に副会長以外は好きな人引っ張ってこれるから、涼子とかたまちとか入れちゃえばいいじゃん」
「薫をまず入れるから」
「私はダメ」
 真琴は薫の表情の変化をみていた。
 そんなに深刻そうな表情には見えなかった。
「なんでよ」
 口元には少し笑みがみえるようだった。
「ラボのこともあるし。進学のこともあるしね」
 空の方を見上げる瞳には一点の曇りもみえなかった。いつものように輝いていて、綺麗な瞳だった。
「じゃあ、今みたいに手伝いに来てくれる?」
「もちろん…… って、もう生徒会に入ったつもりでいるの??」
「そうだよね〜 まだ立候補もしてないのに」
 二人で笑ってしまった。



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