電車に乗ると、薫はこの話をデフォルメして『リンク』で伝えた。
 皆が茶化してくるメッセージとともに『応援するよ』と返してくれて、真琴は少し勇気が出てきた。
「ふふ、皆投票してくれるって」
「ホント、どうしよう」
「大丈夫だよ。たまちも立候補させて、副会長にしちゃおうか?」
 薫は他人事だからなんとでも言えるなぁ。
「?」
「どうしたの? 真琴」
「……」
 中居寺のホームを歩いていると、強い頭痛がした。運動感覚も、視覚も半ば奪われつつある。ヒカリが現れたのだ。
「真琴、もしかして、ヒカリが」
「うん…… もぉぁぅぁぇ……」
「どうしたの?」
 ほぼ何も見えない状態になっていた。口も喉も上手く動かない。
「じゃあね薫」
 言うなり真琴は走り出すと、人混みを左右に素早く避けながら進んだ。あっという間に薫を引きなしてしまった。
 四本あるエスカレータの一番空いているところを見つけて、そこを駆け下りる。スカートは風で捲くれてしまって、周囲の視線をひいたがまるで本人はお構いなしだった。
『どうするのよ』
 真琴の意識は完全に潰されてはいなかった。
『田畑さんがいた!』
『それで走っているの、やめてよ』
 強烈な頭痛で視覚が切れ切れになってきた。まるでタイムラプス映像のように、何秒かおきに風景が飛び込んでくる。
『どこにもいないじゃない』
 ヒカリはキョロキョロと左右を見渡すと、下に向かう階段を降り始めた。
『帰る途中とかじゃないよね。これ。田畑さん、ボクから、なんか逃げてない?』
『……』
 ヒカリの運動スピードが少し鈍った。
 頭痛も少し弱まった。
『呼んでみたら?』
 必死に視覚情報と、中居寺駅ビルのマップ情報を合わせて、現在位置を推測した。おそらく、地下の駐車場だ。
『不自然じゃない?』
『ここを駆け回る方が不自然だよ』
『……』
 真琴は頑張ってヒカリの記憶や思考を感じ取ろうとするが、今は不思議な立体が形を変えながら回っているとしか感じれなかった。これらが何を意味しているのか、今もまだ何もわからない。
「田畑さん……」
『声ちっさ!』
 目の前に、何か、嫌な黒いモヤがかかった。
 おそらくヒカリがボクに対して反抗心を示した現れなのだろう。
「田畑さん」
 幾分、まともな声になった。
「田畑さん! いるの?」
 人のない薄暗い駐車上に、ヒカリが発したボクの声が響いた。
 いくら広い駐車場とは言え、この状況で聞こえないはずはない。
『ここじゃないわね。じゃなきゃ、ヒカリに会いたくないんだよ』
『そんなことない!』



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