「まさみ! 出てきて!」
 必死に左右を見回していた。
 真琴も胸が締めつけられるような想いがした。なんだろう、ヒカリの気持ちであることは間違いないのだが、ボク自身の想いのような錯覚を覚える。
『もう諦めなよ』
『ダメよ』
「まさみ!」
 アテもなく走り始めた。
 どこかでエンジンの指導音が聞こえる。
 立ち止まっては左右を見て、また車の列を超えるまで走り、立ち止まって人影を確認する。
 駐車場特有のタイヤの音が響くと、急に目の前に自分の影が伸びた。
『ヤバイ!』
「!」
 ヒカリはとっさに体を動かし、駐車している車のボンネットに移動させた。
 車のナンバーを見ようとするが、ヒカリが体を奪っているために意識がそこに集まらない。
 車は旧停止してバック用の明かりがつくと、同時に、勢い良くバック走行を始めた。
『逃げよう!』
 ヒカリがぐんぐんと加速しながら元来た入り口に向かって走る。車は音を立てながらカーブして、切り返して前進して追ってくる。
『隠れよう』
『逃げれるよ』
 ヒカリはジャンプすると止まっている車のフロントグラスに手をついて車を飛び越えた。
 ヒカリが階段を駆け上がる時に大きなブレーキ音がすると同時に、女性の叫び声が聞こえた。
『田畑さん?』
 ヒカリは踊り場で急に体の向きを返すと、再び駐車場に向かった。
『まさみ、まさみ……』
『まさか、田畑さんが狙われてたってこと?』
 いや、そんなはずはない。
 他に人影は見えなかった。明らかにボクを狙っていた。
『まさみとボクを見間違えたのかも』
 ヒカリの意見はとても同意出来るものではなかった。見間違えで人を殺すようなことがあってたまるか。
 階段を降りきると、体をかがめて駐車場内の様子を眺めた。そこからでは見えないが、女性の声が聞こえる。
「やめて、離して! 離してってば!」
 更に姿勢を低くして駐車場に入り、車の影に入った。まだ声は聞こえるが、人の姿は何も見えない。
 なんだろう…… ヒカリのせいとは言え、やけに頭がいたい。我慢できない。
 しゃがんだまま車に背中を預けると、目の前にローファーの靴が見えた。そのまま見上げると、そこに女生徒がたっていた。間違いなく、東堂本の生徒だった。
「か、おる?」
 ヒカリがそういうと、女生徒の口元が歪んだ。
 が、それは一瞬だった。
 女生徒はゴールキックのようにステップを踏んで蹴り上げてきた。
 慌てて手を挟んで、ダメージをいくらか削いだのだが、後頭部を車の扉に激しく打ち、反動でそのまま横に転がってしまった。
「何! 何するの…… 薫」
 違う、何か違う、この人は薫じゃない。
 ……薫じゃないなら、誰?
 腰まである長い髪、結んだリボン。
 薫じゃないか。何が違うというんだ。



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