「いや、本当に知らないんだ」
「ヒカリがやったってこと? ……やっぱり一度ラボに行って……」
 いや、ラボの連中の中にこの前のような危険人物がいるんだ。危険すぎる。薫だって捕まったのに、不安じゃないのか?
「別に危ないことをしてるんじゃないんだと思うんだ。だから、ちょっとラボは待ってよ」
 真琴は田畑の件で消去してやりたかったヒカリを、今は消されないようにかばっている自分がイヤだった。都合良くヒカリを利用しているのはボクの方だ。
「だけど、何をしたか知らないんでしょ? マズイよ、それって【鍵穴】がエントーシアンに乗っ取られることと何が違うの? 確かに今までは協力してくれてたけど、もう私のように非活性エントーシアンでも戦えることが分かったんだし」
「ヒカリはエントーシアンじゃない」
「エントーシアンよ」
「……薫はボクの気持ちを分かってくれないの?」
 薫は急に目線をそらした。
「……」
 ボクはあまりこの話を引っ張る気持ちはなかった。電車が入ってくると、ボクと薫は全く別の話をした。上野さんが体育祭で騎馬戦の為にダイエットしていて、結構つらそうだ、ということとか、最近、急に寒い日があるとか、他愛のない話をした。
 いつものカーブで、大きく揺れると、いつものように薫の体を抱き寄せた。
 薫の体が触れた途端、脇腹に激痛が走った。
「っ……」
「!」
 薫がそっとボクの体から離れた。
「大丈夫??」
「ちょっと見て」
「ここで?」
「ボクは平気だから」
 制服の端をつまんで持ち上げた。薫が体を屈めてどうなっているかを見てくれた。
「あざになってる…… 一箇所じゃなくて、あちこち……」
「触った感じはどう?」
「変に曲がったりはしてないから、折れてはいないと思うけど…… 触っただけだと、ひびが入ってるとかは判らないわ。痛いんでしょう?」
「それなりには痛いけど、今まで骨折とかひびが入った経験ないからさどれくらい痛いもんなのかわからないし」
 薫はスマフォに指を滑らせ、何か調べているようだ。
「このあざがついさっき受けたものなら、冷やした方がいいみたいだけど」
「いつ受けたものかは分からないよ。その場合は」
「だとすると、自然に治るのを待つしかないって」
 電車が急にブレーキをかけた。
 薫はそのまま真琴にしがみついた。
 脇腹に痛みが走る。
「ご、ごめん」
「大丈夫」
 薫がハンカチを出して、顔を拭ってれた。
「汗がすごいよ、やっぱりこれ、見てもらおう」
 薫はスマフォを操作していた。
「メラニーに車回してもらうから、病院に行こう」
「学校が」
「体の方が大事よ」
 もう体育祭だ、こんなことで休んでしまったら、リレーにも出れないし、皆の期待を裏切ってしまう。母がくるというのに……



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