「ごめん、今日は学校にいく!」
 堂本駅につくと、真琴は薫の手を振り切って学校に走り出した。
 痛みはある。
 大丈夫。今朝までなんとかなったんだから。
「真琴、待ってよ、分かったから。今走ると余計に悪くするよ」
 後ろから薫が追ってきた。
「メラニーには言っておくから」
 追いついて、真琴の手を取った。
「できるだけ余計な運動は避けて。真琴は体育祭に出るつもりなんでしょう?」
 真琴はうなずいた。
「そう。本当は医者にいってどういう状態か見てもらって、可能な限りの治療をした方がいいと思うけれど」
「今日、体育祭の練習があるでしょ」
「リレーのメンバーに入るつもりなの?」
「そうよ」
「呆れた」
 そのつもり通常の授業は出るな。日常生活の動きでも負荷がかかるから、体に無理がかかる。真琴は頭痛で保健室を利用するには先生に話しが通っているから、体育の授業までそうしていればいい、と薫は説明した。
「いい。そんなちょっとの時間では、治らないと思う。それに、リレーはバトン練習とか、いっぱい動かないといけないのよ、本当にそれが出来るの? あと、その時、ヒカリに変わってなければいけない。そんなに条件が厳しいのに、やれるの?」
 真琴には、体が動くのか、とか、ヒカリが交代してくれるという裏付けも何もなかった。
「やる」
「じゃあ、言ったとおりにして」
 学校につくなりいきなり保健室に真琴をつれていき、体育着に着替えさせて寝かせた。
 教室に戻って、この事は先生に言っておく、と言って、薫は教室に行ってしまった。
 保健室の先生が、紙をパラパラとめくる音以外は、何も聞こえて来なかった。目の前に広がるのはただ何もない天井だった。
 そんな退屈な状況であることに加え、体の疲れがあったのか、あっという間に真琴は眠ってしまった。
 気づくと、真琴は駐車場に倒れていた。
 すばやく起き上がると、目の前にいる薫を蹴り飛ばしていた。
『どういうこと?』
 真琴は言った。
『昨日のことだよ。話すとボク疲れるから、このままこれを見ててよ』
 蹴り飛ばした反対へ、真琴は走り出した。
 薫もバランスを少しくずしただけで、すぐに真琴の後を追ってきた。
 地下の駐車場から上がる階段を駆け上ると、店内に出る扉をパスして、さらに階段を上がろうとした。階段には鎖がかかっていて、関係者以外通行禁止の札があったが、そのままそれを飛び越していた。
 信じられない脚力だった。階段を三つ飛ばしながらのハイペースで駆け上がっていた。フロアの番号を見ていると、あっという間に八階を超えていた。
 目の前に扉が現れ、小さなスペースがあった。
 おそらく屋上へ出る扉だ。
 扉にはサムターンもなく、屋上に出る手段は断たれていた。
 階下から、早くも追手が上がってきた。
 見ると、それは男で、薫ではなかった。
「そこで行き止まりか…… お前に勝ち目はないぞ」
 Tシャツにジーンズの男は、そう言って拳を構えた。