「大丈夫だよ。起きれるから」
 真琴は体を起こして、ベッドから足を下ろした。
 こんな短時間に治るような感じではなかった。
 もしかすると、脳が麻酔がきいたようにになった、感じていないのかもしれない、真琴はそう考えた。
 二人は職員室の先生と一緒に、昼食をとった。
 食べ終わりに三人で話しをしているところで、急に担任の金田先生が入ってきた。
「新野は、ここにいますか?」
「はい」
 返事をして立ち上がった。
「体調大丈夫? 職員室、来れる?」
「金田先生、どういう要件ですか、新野はまだ体調が良い状態ではないです。話ならここでお願いします」
「そうですか…… じゃ、ちょっと連れてきますから、来たら、新野以外は外に出てもらえますか。重要な話なので」
 金田先生は、会釈して出ていった。
「なんだろう?」
 薫は金田先生がでって行った方を見ながら、不安げにそう言った。
 おそらく、昨日、中居寺の駅ビルで騒ぎになったことだろう。今、真琴が知っている限りでは、店内を走り回ったことぐらいだった。それだけなら、だからどうだ、という程度のことだが……
 知っている部分はまだそこまでだ。
「……」
「心配ないよ。大丈夫だよ、真琴」
「とりあえず、体調が悪いのは本当なんだから、そこはしっかり主張してね」
 食事の片付けをして、真琴は再びベッドに戻った。薫は先生達が来たら出ていかなければならないので、支度だけして真琴の横に座っていた。
 扉が開くと、数人の影が仕切りに映った。
「北御堂さん、そとに出ましょう」
 保健室の先生の声に、薫は返事をした。
「はい、今出ます。真琴。本当に心配ないから、なんかあったら真っ先に私に相談してね」
 そう言って、バッグを手にしてしきりを動かし、外へ出ていった。
 入れ替わりに男が二人と金田先生が入ってきて、ベッドの横に並んだ。
「新野さん、少し体起こせる?」
「は、はい」
「体調悪いんだから、無理しないで」
 遠くから保健室の先生が声をかけた。
 地味なスーツの男が言った。
「いいですよ、寝たままでも」
 少し白髪が混じっていて、中年というより初老なのか、と感じた。
「話をしてもいいですか?」
「……」
 金田先生に、というより真琴に聞いているようだった。
「はい」
「じゃあ、聞くね。昨日、君、中居寺の駅ビルで、あちこち走り回ってたね?」
「たぶん」
 急に目つきがするどく変わった。
「たぶん、というのは?」
 ヒカリから見せてもらった映像だからです、とは言えなかった。それが本当の理由なのだが。
 しかし、それを言い換えて、記憶がないからです、とも言えなかった。本当に病院に入れられてしまう。確かにヒカリが体を動かしていると、分裂症かなにか、精神の病とまるで変わらないだろう。
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