「頭が痛いです」
「知り合いかどうかは?」
「ごめんなさい。頭が痛い。これ以上話せない」
 旭は、さっと写真の束を上条に返した。
「やっぱり、田畑さんに直接きいてみます。先生、田畑さんの出席状況は?」
「あ、ええ、一度職員室に戻らないとわかりませんが」
「じゃあ、早速戻りましよう」
「良いんですか?」
「もう質問は無理だ、と生徒さんは言っておられる」
 金田先生はメガネの、ガラスのないところで真琴をチラリ、と見た。
「すみませんお役にたてず」
「いいんですよ」
 上条の方から、しきりの外に順番に出ていった。最後に、金田先生が言った。
「ゆっくりやすんでください。無理をさせてごめんなさい」
 両手を揃えて、真琴に頭を下げた。
 さっきの視線では怒っているのだとばかり思っていた真琴は、少し拍子抜けした。
 刑事と金田先生が出ていくと、入れ替わりに保健室の先生が入ってきた。
「北御堂さんはちょっと用事が出来たみたい。新野さん、あなたも午後の体育祭の練習にでるのなら、準備をした方がいいわ」
 真琴はさっき頭痛がして質問に答えなかったことを説明した。
「いいわよ。治ったって言えばいい。具合が悪い状態の子に質問に来る方が悪い」
「そう言っていただけると気持ちがすこし楽になります」
「まあ、気にしないでいいのよ。あなたが悪いことをした訳ではないなら、向こうのたずねてくるタイミングが悪いんだから」
「はい」
 真琴は体調がさっきまでとガラッと変わっていることに気づいた。
 重かった体がいつもより軽いくらいだし、刑事がいた時の頭痛は、すっかり治まってしまっている。不自然なくらいに回復しているのだ。
「おかしい……」
「ん?? どうした?」
「いえ」
 真琴は制服を捲り、脇腹のあざを見ようとした。しかし、あれだけ目立っていたあざがみえなくなっていた。
 そもそも見る為に体を曲げるだけでも居たかったのだ。
「そう。さっきも言ったけど、気にしないでいいのよ」
 そうは言っても、気にする気にしないは内容による。
 走ったり運動が出来るようになるのは、精神が入れ替わって体の使い方が良くなるからだ、というのは、なんとなく理解出る。
 しかし、体が治ってしまうのはどうなのだ。
 ヒカリがやっているとしたら、ヒカリは細胞レベルでボクを侵食しつつある、ということになる。精神侵略ではないのか。遺伝子レベルで体を組み替えられたら、地球人ですらなくなってしまう。
 真琴はたくさんのお礼をしてから、保健室を後にした。
 廊下に出て、小さく手を振ってくれた。
 真琴も振り返って、笑顔で答えた。
「ありがとうございました」
 真琴は、体育の授業に入る為、ヒカリを呼び出そうとしていた。
 目を開きながら、もう一つの世界に呼びかけた。
『ヒカリ、ヒカリ!』
 薄く現実の廊下が流れていくが、ヒカリは現れなかった。
『ヒカリ! ねぇ! これどうなってるの?』
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