「……」
「店内を走った後、非常階段側に入ったが、その後は、覚えている?」
「……」
 細く、しわがたくさんある目だったが、奥の光りは冷静で、鋭かった。
「話せない……か。なんだろう、君をどうこうしようということじゃないんだよ」
「新野さん。正直に話して」
「先生、ちょっと黙ってもらえますか」
 話すのはその初老の男の方で、一方の男は比較的若く、入ってきてからはずっとメモをとっているようだった。
 若い男は、白髪の男に耳打ちした。
「ああ、忘れていた」
 若い男の一言で、急に目つきが変わり、上着のポケットに手を突っ込むと、手帳と取り出した。
「基本を忘れていたよ。私は国分野(こくぶんの)警察署の旭(あさひ)と、上条です」
 若い男も、手帳を開いて見せた。
「上条です」
 真琴はうっすらとわかっていることだったが、警察だと名乗られて緊張した。
「君を疑っているとかではないんだ。だから、まずは安心して欲しい」
 上条が、旭へ写真を渡した。
「昨日、君を追い掛け回していた男、この男だったかな?」
 旭は一枚選んで、真琴の方へ見せた。
 真琴は大きく咳をした。
 蹴られた脇腹を中心に、激しい痛みが体を走る。
 Tシャツの男が真琴の胸ぐらを掴んで引き押した。
 冷徹な目と、鼻の横にあるほくろが見えた。
「ちがうかな?」
 真琴はヒカリの見せる映像と現実が混じってきていた。
「そう…… だと、おもいます。ほくろが同じだし」
 言ってしまったが、それは自分の記憶ではない。ヒカリが真琴の体を使っているときに見たものだ。これで何かなってしまってもいいものなのだろうか。真琴は戸惑った。
「ありがとう。後、もう少しいいかな」
 旭と名乗る刑事は再び表情を固くした。
「後二人、女性と中年男性と一緒にいたようだ。女性はカメラに映っていなかった。男性は映ってはいるものの、特定が難しかった」
 真琴は写真を出すのかと、旭の手元を見ていたが、写真は出てこなかった。
「この連中と何があったのかな。話せる内容だったら話をしてほしい」
 してほしい、という要望ではなく、知っていることを話せと受けとめるのが正しいほど、言い方はきつかった。
 真琴はヒカリの映像の後に、何があったかしらない。そもそもなんで地下駐車場で追われていたのか分からなかった。
「……」
 旭は目を細めた。
「では、この学校の生徒ということは分かっているんだが、この娘(こ)は知り合い?」
 ある女性の写真を見せると、体がビクッと反応した。
 どちらかというとそっちにビックリしてしまい、目から入った映像を理解するのが後になってしまった。
 写真の女性は、田畑まさみだった。
「何か知っているね」
「……っ!」
 何か、まるで言ってはいけないとでも言いたげな感じに頭痛が襲った。
 真琴は両方のこめかみを抑えた。



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