人気がなくなった時、麻子が切り出した。
「笹崎先生、女の子が好きなのよ」
「えっ?」
「あ、そうじゃないかって思うの」
「ど、どうして?」
あの居残りの時の事、見られただろうか。
「あ、えっと……」
「なんか、見たの?」
「そうじゃなくて」
あかねはほっとした。
「お、驚かないでね」
「う、うん」
麻子は視線を落とし、ゆっくりと歩いていた。
暗くてよくわからなかったが、少し頬も赤くなっている気がした。
「居残り練習の時……」
えっ、誰の居残り練習の時?
「い、居残り練習って、いつの?」
「あっ、私、私が居残りさせられた時ね」
あかねはなんとなく察しがついた。
「笹崎先生になんかされたの?」
「……なんかって」
「何されたの?」
「えっと……」
ちょっと聞き方がまずかったようだった。
あかねはちょっと勝手に変な言い方をしたことを謝った。麻子も気を取り直して話を続けた。
「笹崎先生に居残りさせられた時、私……」
あかねはじっと麻子の顔を見つめて、言葉を待った。
「私……」
麻子は両手で顔を覆った。
あかねはイライラしてきていた。キスされた、とか触られた、とかそんなことだろう。さっさと言ってくれ。
「恥ずかしい」
あかねは少し意地悪な気分になっていた。
「えっ、そんなに恥ずかしいことまで!」
麻子は両手を広げてから、手のひらをクルクルと振った。
「違うの、違うの。そんな、そんなことまでしてないよ」
「けど、今、恥ずかしいって」
「あ、えっと、うんと、それじゃ、あかねだったらどんなことが恥ずかしい?」
コレ、どこまで続けるつもり、とあかねは思った。意地悪のレベルが一段上がった。
「バイブレータをクリトリスに押し付けられた? とか」
「いやぁ〜!」
小道を小走りに逃げていってしまった。
あかねはしかたなく追いかけた。
ワザワザひとけの無い道を歩いたのは、こういう話を正直に話せるからではないのか。言うつもりがないのに、こんな周り道をさせるな、とあかねは思った。
「ゴメン麻子。じゃあ、どんなことだったの?」
「いや、あねのね…… えっと」
あかねは、麻子の方にどんどん近づいて行って、ブロック塀に手をついた。吐息がかかる程、さらに顔を近づけていった。
「こんな感じだった?」
あかねはそう言って、麻子の耳元に口を近づけた。
「(こんな風にされた後、キスされたんじゃないの?)」
「あんっ……」
麻子は目を閉じてキスを待っているようだった。そのままイタズラでキスしてやろうかとも思ったが、笹崎先生のそれも言い出せずにこんな感じになってしまっている麻子を、更に惑わせることは出来なかった。
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