「あんたもっと中に入りなさいよ」
 あかねと香坂だけが入り口付近にいたせいで、入り口のオートドアが開いていたのだ。
「どういうこと?」
「あんたがそこにいるせいで、そっちが閉まらないのよ。閉まらないと内側は開かないの!」
 それを聞いて町田が言った。
「私何回もやっちゃって……」
「そうなんだ」
 あかねはそう言って後ろを振り返った。
「!」
 宅配業者のような格好の男が、息を切らせながら入ってきた。大きな荷物を抱えていて、顔は見えなかった。
 その場に立ち尽くしていると、神林が言った。
「ほら、あんた邪魔よ!」
 あかねはようやく入り口ないのスペースに入り、外側のドアがしまった。
 神林はもう一度部屋番号を押して『来ました』とだけボソリと告げると、内側のオートドアが開いた。
 六人はそのままマンションの奥に進み、エレベータを使って八階に上がった。山川が先頭になり、あかねの後ろに神林が回った。
「あんたがキョロキョロしながら遅いから、見張ってなきゃね」
「キョロキョロするよ。初めてくるところなんだから」
 山川が部屋のチャイムを鳴らすと、扉の錠だけがあく音がした。
 山川がそのままドアノブを回して、扉を開け、香坂、上条、町田、と入っていった。
「ほら、やっぱり遅い」
 神林があかねを突き、あかねはビクッとして前に進んだ。
 部屋の中から甘い香りがしてきた。
 玄関も広かった。
 靴の数をパッとみると、今入っていった三人分の靴しかなかった。スリッパとか、普段履きの靴とか、何らか住人の一足ぐらいあっても良さそうなのに。
 さっと見回した部屋の清潔な感じが、まるで人が住んでいない部屋のような気がして、少し怖くなった。
「早く入って」
 山川があかねを押しやって、靴を脱いでそのまま部屋に上がっていった。神林が扉を閉めると、体を屈めて山川の靴の向きを変えて、揃えておいた。
「失礼します」
 そう言ってあかねも部屋に上がって、自分の靴を揃えながら扉をみた。神林が扉に鍵をする様子がなかったので、たずねてみた。
「部屋の鍵はしめないの?」
「ものを知らないの? ここはオートロックなのよ」
「確かめていい?」
 あかねは靴を履いて外に出ようとしたが、神林に止められた。
「ダメ」
 あかねはもう一度靴を脱いで部屋に上がり、言われるままに奥のリビングへ進んだ。
 広くて白い部屋には白くて、毛足の長いラグが床が見えないほど何枚も敷かれていた。床部分は円形に一段下がっていて、縁に背中を預けられるようソファーのように膨らんでいた。
 窓には厚いカーテンが掛かっていて、床の所々にある照明と、壁沿いに何箇所かある間接照明で照らされていた。間接照明だが、暗いわけではなく、本を読むほどではなかったが、明るかった。
 山川はそこに座りスマフォを眺めていた。町田はすでに円形の床に横になって、小さい灯りの前で雑誌を広げている。
 香坂と麻子はどうしていいか分からないように床の端に立っていた。
 神林が、例によって背中を突いた。
「何やってんの、座りなよ」
 あかねに言っているというより、私達に言っているようだった。
「フワフワだから」
 町田は誰に言う訳でなく、無邪気な感じにそう言った。



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