「ちょっと辛いというか、苦いというか。薬っぽいというか」
「!」
 三人はお互いの顔を見合わせた。
「あ、かき混ざってないかも」
 町田がやってきて、マドラーでクルクルとかき混ぜた。
「混ざってないって、何の事?」
 町田の口を抑えて、山川が言った。
「原液を薄めて作るのよ。だから、良くかき混ぜないと元の炭酸だけの味になったりするの」
 まともに信用できなかったが、提供される情報はそれだけなので、あかねにはウソなのか本当なのか判別出来なかった。
 神林達が適当に飲んで食べ始めてしまったので、あかね達もどうしていいのか分からなかった。ドリンクを飲み、スナックを少し、また少しと口に運んでいくうち、何か酷いことをされるのではないか、というあかね達の思いは消えていった。
 ほぼ全員がグラスの三杯目に入りかけたころ、香坂が急に体を寄せてきた。
「あかね先輩あかね先輩。美々、先輩に甘えていいですか?」
「え? 甘えるの? どんな風に? 甘えてみてよ」
 あかねは自然な仕草を装いながら、香坂の髪の毛をなでた。
「いいんですか? 美々がぁ、甘えるのはぁ、こうするんです」
 髪を触っていた手を下にすり抜けて、右胸の方へ頬を寄せてきた。反対の手で、左胸の方へ触れきた。
「おっぱいさわりたかったの?」
 あかねはすり抜けられた手を、香坂の腰にまわして抱き寄せた。
 変だ。
 自分も、香坂も。
 正面にいた、麻子が、目を細くしてこちらの睨んでいた。
「な・に・やっ・て・る・ん・で・す・か?」
 麻子は言い終わると、グラスに挿していた三本のストローを一気に口に含んで、音を立てながらドリンクを飲み干してしまった。
「あまえてるんですよぉ、いいじゃないですか、先輩にはあまえるんですよぉ」
「じゃあ、私もあかねにちゅーするよ? いいの?」
 そう言って麻子は頬を膨らませた。
「いやいや、麻子がちゅーするのは関係ないよね?」
 麻子はフンと言わんばかりに横を向いた。
 ……だから、明らかに変だ。
 私達は、神林達になにかされると思っていた。
 それも、多分、理由はよくわからなかったが、暴力的ななにかをされると思っていた。
 それが、ただ呼ばれて、部屋に案内されて、ドリンクやスナック菓子を食べている……
 全部、狂っている。
 あかねの胸をモミはじめた香坂とか、何かにつけて突っかかってくる麻子とか。自分も何か、かっかするように熱い。なにか、普通の飲み物ではなかったのだろう。
「あ、これ、お酒?」
 そう言って、あかねは神林の方を見た。
 神林はニヤリと笑うだけだった。
「お酒なんでしょ?」
「お酒でもいいじゃないですかぁ。美々、とても気分がよくなりましたぁ」
「お酒だからなんだっていうの? あかね」
「麻子、私達の年齢では、お酒のんじゃいけないんだよ」
 町田が、キッチンの方へ小走りに去っていくと、山川はスマフォであかね達を撮影し始めた。
「何写真なんか撮ってるのよ」
 あかねは言った。
「あなた達がお酒飲んでいるところの写真よ」



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