あかねは町田のその軽い口調のせいで、余計に残酷に聞こえた。
 麻子が言った。
「募金とか、そういうこと?」
 神林は無言で首を振った。
「ダメだった」
 山川が言った。
「例えば、今いくら募金出来る?」
 美々や麻子が何となくの額をぼんやり言う。月のお小遣いをほとんど出し切っているくらいの額だ。
「そうだよね、それくらいなんだよね」
「同じ部活の人なら、それくらい。そうじゃない人に頼んだらもっと少ないし、くれる人の割合が酷い」
「どういうこと?」
「何百人と声がかかっているはずなのに、何人も通り過ぎて、このパネルを見たはずなのに」
「それだけで今言った額の十分の一とか、百分の一だと、正直、絶望というか」
 あかねは、ここへ来て、神林が、この話を何につなげようとしているのか、想像がついてしまった。
 正直、遠山先輩の事になった瞬間、すべての話を忘れてしまった。
 そして本当に神林達の話に乗って、それでもいいような気がした。
 でも違う。
 あかねの中ではやっぱり何かが違った。
 ああ、こんなことに利用するのか、遠山先輩のことそれ自体本当なのだろうか、それすら疑わしいとさえ思ってしまう。本当だったらそれで美談とかになるんだろうか。
「あのさ、バイトしようよ」
「半分でいいから、遠山先輩の役にたててくれないかな」
 神林と山川が代わる代わるそう言う。
 町田は自分の手で口を抑えている。
「青葉でバイトしようよ、私達と一緒に」
 きた、とあかねは思った。バイト先の地名まで出した。間違いない、半ば風俗のようなものだ。そんなことしてはいけない。
「イヤ。どんなバイトか知ってるのよ」
 あかねは立ち上がった。
「遠山先輩の為なんだって。動画みたでしょ?」
「どんなバイトか説明していいの?」
 あかね自身も全部を把握している訳ではない。本当にそれを口で言って、神林を言い負かせるか自信はなかった。
「どうせ、こんなのもどこかで録画しているんでしょ?」
 美々と麻子はどうしていいか分からないようだった。
「そうか、あんたが青葉に来たのは、何か勘づいたからなのね」
「そうよ、あのセクハラ体育教師と組んでるんだと思ってね」
 町田愛理が突然、爆発するように笑い始めた。山川も笑った。神林は厳しい顔を一瞬だけ崩したが、すぐに厳しい顔に戻った。
 町田の笑い声が響いている中、神林が説明を続けた。
「あの体育教師はただ利用されていただけよ。部内に揉め事を起こして、注意をそらしているだけ。あいつ、ただのバカだから。それだけ。何の関係もないわ」
 町田の笑い声がさらに大きくなった。
 ツボに入ったどころじゃない。
「川西先生のことはおいておいて、あなた達が青葉でやっているのは、売春と同じじゃない」
「うわ! すごい単語知ってるのね、あかねさん」
 山川が嫌味ったらしくそう言った。
「私達のバイトはそんな方に触れることじゃないわ。青葉の観光案内よ」
「あかね、誤解したまま私達のことを悪く言わないでくれる」
「誤解じゃないでしょ」



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