その言葉を聞いて、真琴はこのベストの男が悪党ではなく、間抜けな手下だと判断した。
 多分、本当の悪党ならこのフィールドの仕組みを言わないだろう。自分がかなり有利と思って、気が抜けたのだろうか。
「ボクが動かなければ軸は動かないわ」
「君、小学校の算数、出来ない人?」
 一番傷つくところに触れられた気がした。
 言われ慣れているけれど、言われると悔しい部分。
「その分、ボクがそっちに行けばいいだけさ」
『何言ってるの? いるかわからないおばあさんのことを気にして、ボク達が殺られててもいいの?』
「なんとかする!」
「何とかする? 君たちはフィールドを壁に押し付けられたら困る訳で。もう、前に進むしかないんだからね。動きは予測しやすいよ」
 二人を中心に発生しているフィールド。
 相手が一歩進めば半歩分が動いてしまう。
 しかし、これでどうすればいいのかは考えることが出来る。
 何も状況を知らされなければ、後ろで見知らぬ人が圧死していくばかりだった。変に動いて、他の人も傷つけていたかもしれなかった。
 とにかく、前に進んで倒すしかなかった。
『正面に突っ込んで』
 ヒカリは背を向けていた。
『ボクやいやだね。君がやればいい』
『ボクが殺られれば、君も同じだよ』
『正面に突っ込めば、ボクだって殺られてしまう』
『手数で圧倒するしかないよ』
『軽く言ってくれるぅ〜 じゃあさ、真琴がそうやってみせてよ』
 ベストの男は半歩前に進んだ。
 フィールドはそれに合わせて後ろに動いた。
『うしろのおばあさんを救わないと』
『そこに人がいるかは誰もしらないのよ』
『後ろを振り返らせてくれないのは誰よ!』
『振り返ったら、男に技を食らって死ぬわ』
 ヒカリのコントロールを奪って、真琴は声を出した。
「聖なるバトンよ!」
 真琴の右手が光り始めた。
『これだ!』
 真琴は右手を前に突き出して、半歩前進した。
「光った? 何か波動でも出すっての?」
 ベストの男は警戒するように半歩下がった。
『前に出て、ヒカリ』
『バトンは取らないの?』
『この手、光っているところで受ければ痛くないから』
 ヒカリは手のひらを天に向けて呆れたような表情を見せた。
『バトンを奪われるかも。あるいは光っているところじゃないところに方向を変えられたら?』
「何もないなら……」
 真琴はさらに右手を前に突き出した。
 男は怯んだようにバックステップした。
 真琴は右手を引いて胸の前で、左手を右手の平の奥へ差し込んだ。夢のなかでは何度も経験した、あの光る宝石のついたバトンが手に握られた。
 真琴は引き抜いたバトンをクルクルと回しながら頭に掲げ、天を指すようにして止めると言った。
「マジックダイバー、エントリー!」



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