バトンの両端の宝石が光り始めたかと思うと、真琴の衣服は光とともに散り散りに広がっていき、輝きが最高になった時には完全に体のラインが浮き出ていた。
 そして光がおさまった時には、小さな帽子とセイラーカラーのワンピース、膝上のソックスというスタイルに変わっていた。
「現実で変身するのは初めてね」
「とうがたった魔法少女……」
 ベストの男はあっけにとられたように、真琴を見ていた。
 真琴は、バトンを回しながら叫んだ。
「イレイズ!」
 両手でバトンを持って、ベストの男へ向かって叩くように振り下ろした。
 輝く光りの粉がベストの男をめがけて吹き飛んでいき、囲むように周り始めると、頭から順に姿を消し去ってしまった。
 同時に、二人を隔離していたフィールドも消え去ってしまった。
『……なら、最初からやってよ』
 ヒカリが振り向いた。
『ボクが現実でも魔法少女になれる、なんてさっき知ったよ』
「ママ! こしゅぷれだ、こしゅぷれしてる」
「そうね。コスプレしてるわね」
 真琴は声の方を見た。
 対決しているベストの男もいないが、フィールドも消え去っている。
 とうがたった魔法少女の格好をした女が、小道具のバトン片手に一人立っているだけだ。
「あれ、何てアニメなの、お前ならしってんじゃん」
「あんな魔法少女モノねぇよ…… 服は、魔法・拳法少女マイ、あたりかな?」
「なにそれ?」
 ざわざわと人が集まってきて、真琴は頭がぼーっとしてきた。
「まこッ……」
 それは涼子の声だった。
 思わず叫んでしまった後で、状況判断して言葉を飲み込んだようだ。
 目は合ったが、会話出来る状況ではなかった。
 真琴は人垣が薄いところを探して、そろそろとそちらに動きだした。
 何人かスマフォを向けて写真を撮る者も出てきて、さっさと走りさろうと考えた。
「!」
 涼子がジェスチャーをしながら、指さしていた。
 真琴はそちらを見やると、何を言わんとしているのかが分かった。たしか駅ビルのデパート内のお手洗いを指指しているのだ。
「ごめんなさい、通してください」
 真琴はさっと通り抜けると、デパートの奥へと入った。
 時間帯なのか、女子トイレは混んでいた。
 幸い、外まで人の列は出ていなかったが、それでも並んでいると変な目で見られた。
 ようやく順番が来て、トイレに入ると真琴は何をすればいいのかわからなくなった。
『ヒカリ、どうやって変身を解けばいいの?』
『寝たいんだけど』
『ボク、変身解いたことなかった』
『そんなことないよ。いつも普通にもどってたじゃん』
 ヒカリは横になっていて、適当な返事しか返ってこない。
『バッグも何もなくなってるし』
『どっちかっていうと、そいう現実的なことは真琴に任せてるんだけど』
 ヒカリはどこから出したのか、布団の上に横になり、かけ布団を肩まで引き上げた。
『知ってるんでしょ? 変身の解き方もバックの置き場所も!』
『知らん』
 ヒカリは完全に目を閉じてしまった。



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