『ヒカリ!』
 次第に見えなくなったヒカリの姿と逆に、現実のトイレの様子が目にはいってきた。
「どうしよう……」
 指で衣服を触ると、確かに普通の服でしかない。バトンの先端の輝きだけは、どう考えてもこの世のものではなかった。
 このバトンをしまえばよいのだろうが、何をすればバトンをしまって、自分の姿を元に戻せるのか分からなかった。
「キャスト・オフ!」
 真琴は小さい声でそう言ってみたが、服装が代わる様子はなかった。
「ディスアーム」
 変わらなかった。
「キャンセル」
 全く反応しない。
「バトンよ、変身を解いて」
 宝石部分はキラッともしない。
 やばい……
 ポケットのようなものを探したが、この服にはそんなものすらない。
 スマフォとか、バッグはどこに行ったのだろう。
「……もう、こんなのいや」
 真琴はトイレにいたせいか、もよおしてきたので、下着をずらしてトイレに座った。
 スイッチを入れて流水音を流した。
 とにかく、この姿では目立つ。
 真琴は考え方を変えて、変身を解くのではなく、目立たない格好になればいいと考えた。
 記憶にある限りの情報で、制服のイメージを浮かべて、バトンを回した。
「メタモルフォーゼ」
 小さく言うと、今度はバトンの宝石が反応した。
 学年カラーのリボンや、シャツはそれっぽい格好だったが、スカートの丈が短すぎた。ソックスも膝上まであるし、靴も指定のものとはかけ離れている気がする。
 それでも全体的には目立たなくなっているはずだ。後はバトンをさり気なく持てば、人目はひかないはず、と考えた。
 個室をでて、手を洗おうと思って、洗面台にすすむと、鏡には見たことのない娘が立っていた。
 目立たないようにと、たいそくにピッタリつけて持っていたバトンを持つ手が震えた。
 髪の色が金色だった。
 それだけではなく、元の真琴の髪の長さではなく、胸まである長い髪は、両サイドでまとめられて、ツインテールになっていた。
「ママ! こしゅぷれだ、こしゅぷれしてる」
 さっきも同じ娘(こ)に指をさされた気がする……
 声がした方を振り返ると、さっきの女の子がこっちをみていた。後ろにいる母親の視線が痛かった。
 真琴は目を手で覆って、速やかにトイレを離脱した。
 とにかく、髪色は目立つかもしれないが、制服は地味なものになっているわけだし、とにかくこの場を離れよう。真琴は涼子を探そうと思った。
「!」
 女子トイレに並んでいる人は、いつの間にか外につらなっていた。並びの後ろに、涼子を見つけた。
「(涼子助けて……)」
 涼子は伊達メガネをしていた。
「(私もトイレ行きたいから、真琴は外の証明写真をとる機械の中で待ってて)」
 そうか、あそこならカーテンも掛かっていて、この頭でも目立つことはない。真琴はうなずくと、急いで駅ビルを出て、通り沿いにある自動販売機の並びに立っている、証明写真撮影機に入った。
 中は、自分の顔が鏡に映っていて、顔の位置を調整出来るようになっていた。
 ここ何年も見たことがない長髪な上、金髪の自分を見つめ続けることが出来ず、壁をみたりカーテンの下に少しだけ見える、他人の足元をみたりしていた。



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