それでも、完全に長髪金髪の自分の姿を無視することが出来ず、何度か見てしまって泣きたくなった。
 涼子、早く来て……
 目の前の自分に耐えられない。
 そこまで考えて、真琴はようやく自分の左手で持っているバトンを使えば、問題が解決出来ることに気がついた。
「そっか……」
 よく考えれば完全に体が隠れている訳ではない。派手な変身をすれば通りを歩いている人たちに見られてしまう。変な格好になれば、足先だけとは言え、注目されてしまう。
 無難で、問題の少ない格好へ移行することが急務だった。
 真琴は立ち上がると、バトンを右手に持ち替え、先端を小さくクルっと回し、言った。
「メタモルフォーゼ」
 真琴は目をつぶり、頭の中で想像した。黒い髪、学年カラーのリボン、いつものスカート…… 何度も心の中で反復して、強くなりたい姿を思い描いた。
 何かが変わった気がした。
 真琴はゆっくりと目を開くと、目の前に映っている自分を確かめた。
「……」
 ボクは思い描いたものが間違っていた。
 しかし、それは仕方のないことだった。
 ボクに取って、この姿は自分の姿より絶対に見ることが多い、いやそれは言い過ぎかもしれないが、少なくともボク自身より真剣に見る対象だからだ。
 だから、故意でなくともこの姿になってしまうのは、至極ボクにとって自然なことだった。
「真琴、どう?」
「涼子、助けて!」
「え? 薫! どうしてこんなところにいるの?」
「違うよ涼子。ボクだよ」
 めちゃくちゃな至近距離で、頭の先からつま先までをジロジロと見ながら、涼子はようやく事態を把握したようだった。
「真琴っ……なの?」
 全く分からない、という感じだった。
「だって声とかもまるきり薫だもん」
 いや、姿形がまるきり薫なら、声だって薫と同じだろう。中身だけが真琴なんだから。
「薫はボクなんて言わないでしょ?」
「確かに抑揚のつけかたとか、ボクっていうところは真琴なんだけど…… 色々信じられない。触ってもいいの?」
「触ってなにがわかるのよ?」
 許可するもなく、涼子は色々と触り始めていた。
 手に触れ、瞳を覗き込み、シャツの隙間から肌をみたり、触ったりしている。
「くすぐったいよ」
「声だしてみてよ」
「そう言われるとかえって何しゃべっていいかわからないよ」
 何か目をつぶって考えているようだった。
「そうだね、本当に薫の声。そのもの」
 涼子は何か考えているようだった。
「薫の家に電話して、メラニーとか、ロズリーヌとかに命令してみてよ」
 涼子は、スマフォをいじりながら、手を止めた。
「発信番号で分かっちゃうか……」
 更に何か調べている。
「イヤヨ、とはじめに入れればいいのね」
 今度は電話をかけているようだ。呼出音が聞こえる。
「ねえ、ボク悪戯なんて出来ないよ、やめようよ!」
 真琴は真剣に断った。



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