「あっ出た」
 真琴の耳と口にスマフォを押し付けてきた。
『もしもし?』
「あっ、ボクだけど」
 涼子は顔を手で覆って、うつむいた。
『ボク? え? なんておっしゃいましたか? もう一度お願いします』
「私だけど」
『ああ、薫様。準備は出来ましたが、どちらに向かえばいいですか?』
「え? 準備って?」
 涼子は会話を聞き取ろうと体を寄せてきた。
『ですから、さきほど頂いた指示のことです』
「確認させて、私、さっきなんて言ったっけ?」
『えっ……ついさっきのことですよ。家に戻るから車を中居寺の駅駐車場に回してくれ、です。そろそろこちらを出た方がよろしいですか?』
 涼子は頭を縦に振った。そう言え、ということだろうか。真琴は勝手に判断した。
「そうね、そろそろお願いするわ」
 涼子が親指を立てた。
『それでは迎えにあがります』
「じゃね」
 涼子がスマフォの通話を切った。
「あっ、イタズラしちゃったじゃん!」
「自分で勝手にしゃべっちゃっただけでしょ?」
「どうすんのよ! メラニーくるまで来ちゃったよ」
「薫がそもそも呼ぶつもりだったんだから、それがちょっと早くなっただけでしょ。大したことないって」
 涼子は真琴の肩を軽く叩いた。
「その格好なら街を歩いても大丈夫だから、出ようよ」
 涼子は証明写真のボックスから出て、真琴の手を引いた。
 真琴もひっぱり出されるように、カーテンを避けて外に出た。
「けど、どこいくの? ボク、バッグがないんだよ」
「ああ、ドラッグストアとここまでの道を戻りながら探せばあるんじゃん?」
 思い出したようにお腹が痛くなった。
 買ったばかり痛み止めもバッグの中だ。
 ドラッグストアには田畑もいたはずだ。
 彼女は掴まったのだろうか。
 なぜボク(ヒカリだが)を逃がそうとしたのか。ボクはそもそも逃げる理由はなかったのに。
「ここ通った?」
 真琴は周りをもう一度良くみた。
「あっ!」
「何かあった?」
 朝、バッグが入っていたロッカーだ。
 もしかしたら、またここに入っているのかもしれない。真琴はそう思って制服のポケットを探した。
「あった!」
「何それ?」
「『サトカ』だよ。サッと電車に乗るICカード式乗車券ってやつ」
「いや、それは知ってるよ。なんでそれで『あった!』なの?」
 真琴は涼子に朝のことを説明した。
「……なるほど」
 二人はロッカーを見た。
 カードを当てれば、もしバッグをここにしまっていれば反応があるわけだ。
「いくよ」
「待って」
 涼子が真琴の手をつかんだ。
「カード見せて」
 二人でカードを覗き込むように見つめる。
「これ、名前、記述されているよね」
「のはずだけど……」
「『北御堂薫』だったりしないよね」
「のはずだけど」



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