涼子はスマフォの『リンク』で薫にメッセージした。
『地下駐車場にきて、待ってる』
 真琴も、自分のバッグの中からバイブ音がしたのに気づき、ポケットに入れていたはずのスマフォが無くなっていなくてホッとした。
 涼子の後を追いかけるように歩きながら、真琴は言った。
「地下駐車場に行くの?」
「メラニーもきちゃうでしょ。びっくりするわよ、同じ顔が並んでいて」
 そうだ……
 これはどうやったら元に戻るのだろう。
 とりあえず普通の人物、金髪高校生でも、とうがたった魔法少女でもない、普通な感じだったので、気にしていなかったが、これは普通の状態ではない。元の自分に戻らなければ、母に顔を合わせることも出来ない。
 薫もそうだが、ドラッグストアにいた田畑さんはどこに消えたのだろう……
「そうだ! 田畑さんは?」
 目の前が急に暗くなった。
 田畑という言葉から想起される記憶に反応して、ヒカリが目を覚ましてしまったようだ。
 涼子は真琴のなかの状況がまるで分かっているかのように反応した。
「今頃何言っているのよ! そんなの、かまってる時間ないわ」
 立ち止まった真琴、というか、ヒカリの手をグイグイと引っ張り、涼子は地下駐車場へ向かって先を急いだ。
 田畑がどこにいるかを知っているわけでもないヒカリは、真琴の体に定期的にやってくる生理痛のせいで、徐々にやる気を失い、眠りへと戻っていった。
 いつもよりぐるぐると遠回りしたが、二人はようやく地下駐車場についた。
 昨日の争いごとがあった場所からは結構離れている。どちらかというと、地下駐車場入り口側に近い。
「メラニー、まだ来ていないね」
 すると静かに黒い車が流れるように向かってきた。二人を見つけたように、ヘッドライトをパッシングしてきた。
「あれじゃない?」
「薫がくるまえに来ちゃったな……どうする、いたずらしちゃおうか?」
「え、だからボクはいやだよ。多分、本人だってもうすぐ来るよ」
 タイヤが路面をグリップしている音だけが静かに聞こえて車がとまった。
 ハザードランプがついて、運転席からメラニーが出てきた。
「薫様、涼子様…… 真琴様はいらっしゃらないのでしょうか」
「うん、ちょっと都合でね。後で合流するんだ」
 涼子がそう言った。
「薫様?」
 そしてしばらくの沈黙。
 真琴も、メラニーが主人である薫の指示を待っていることは分かっているのだが、このまま二人でメラニーの車に乗る勇気が出なかった。
 かと言って、今の状態をすべて説明することも出来ない。
 涼子からつま先で突っつかれ、真琴は決断した。
「……そ、そうなの。後で合流するから。その時もしかしたらもう一度車を回してもらうかもしれない」
「そうですか」
 メラニーが後部座席のドアを開けた。
 涼子に突っつかれて、真琴が先に乗ると、メラニーはドアをしめて、運転席についた。
「どちらへ行きますか?」
 涼子が耳打ちしてきた。
「(家に行くって、言ってよ)」
 真琴も涼子の耳に、小さい声で返す。
「(なんで薫がいないのに薫の家にはいっちゃうの、ファミレスとかにしとこうよ)」
「(家に行こうよ、薫を知っている人をたくさん驚かしたいもん)」
「(気まずいよ)」