「(薫の家なんてこんなに使用人がいて、結局他人同士で住んでるのと変わらないじゃん、気まずいなんて考えてんの真琴だけだよ。とにかく、いたずらなんだから、家に行くの!)」
 まず、前提としていたずらしようとして薫の格好になっているわけではないのだが、涼子としてはイタズラする気満々のようだった。
 真琴にはイタズラが楽しい、というところが理解が出来なかったが、とにかく家に行きたいと思っているらしい。知らない人に今の姿を見せるより、知っている人に見せたいらしい。
 このままの格好で、なんらかイタズラするまで涼子の気が済まないのであれば、どちらかと言えば外で変なことをやらかす方が薫自身に迷惑をかける。家に行った方がよいのだ、となかば強引ではあったが、真琴は自分の心の中に理由付けをした。
「家に戻ってくれますか」
「はい、薫様」
 真琴はメラニーに違和感を感じた。
 なんだろう、と思って何か、たずねてみることにした。
「メラニー、メラニーはいつも、薫様、って言ってたかしら?」
「失礼がありましたらお詫びいたします」
「いいえ、そういうことはないんですが」
 涼子は首をかしげた。
「いつもメラニーは薫様、って呼んでると思ってたけど」
「……」
「気にしすぎよ」
「薫様、何かあったのでしょうか?」
 確かに、真琴としてメラニーに接したことは合っても、薫サイドからメラニーを見たことがなかった。単にそれだけの違和感ならよいのだが。真琴は一旦気にするのをやめよう、と思った。
 車は夜の中居寺の街を静かに走り抜けた。
 薫の家に入ると、ロズリーヌが珍しくきちんとメイド服を着て丁寧な挨拶をした。
「ただいま」
「お荷物あずかります」
 あっ、まずい。
 薫の姿なのに、真琴のディパックを持っていることに今気がついた。
「あ、これは真琴のなの。ボク…… あたしが持ってるから大丈夫」
「あたし」
「とにかく、大丈夫」
 薫の姿をした真琴は振り返ると涼子がクスクスと笑っていた。
 笑い事じゃないだろう、真琴は思った。これ、いつまで続ける気なんだろう。
 真琴は部屋に入っていこうとしたが、涼子が上がってこないので少し戻った。
 何か涼子が言いたげだった。
 多分、真琴に何かを求めているのだが、考えていても全く思い浮かばなかった。
 ロズリーヌが近寄ってきた。
「(涼子さまにはここでおひきとり願うのでしょうか?)」
 あっ!
「違う違う」
 確かにいつも薫が何か言っているような気がする。真琴は涼子の正面に戻って、手を差し伸べるように伸ばしてから、言った。
「涼子。どうぞ、あがって」
 こんな言葉で良かったかは分からなかったが、内容はこんな感じのはずだ。どうしてこうも育ちの違いを思い知らされるのか。
 また涼子がクスクスと笑った。
 わざとやっているのか、ボクをからかう為のイタズラなのか、そう思うと真琴は余計に気が重くなった。
 居間に入ると、ロズリーヌが尋ねた。