「……って、あんたがかけた魔法の時の話しをしているのよ。その光が世界に飛び散ったような様子はないの? それなら飛び火してフランシーヌとロズリーヌの姿が入れ替わった、というのも信じるけど」
「正しい姿に戻れるように、想像を強くしていたから、魔法が別のところへもかかったようなことはないはずなんだけど」
 そうだ、印象に残っている制服のことを思い浮かべて、薫の姿になったのだとすると、その過程でメラニーやフランシーヌのことを思い浮かべていたこともありうる。
 真琴は思わず口を手で抑えた。
 ノックの音がして、ロズリーヌが部屋に入ってきた。
「!」
 ロズリーヌは淡々と料理を並べていった。
 メインの肉料理とライスだった。
 水を継ぎ足し終わると、去り際に薫の姿をした真琴のところへ来た。
「(なにか、お食事に問題がありましたでしょうか)」
 真琴は口を手で抑えた時を見られてしまったのだと思い、首を振った。
「(私にも、厳重処罰を)」
「(しょ、処罰? 厳重注意、とかじゃなくて?)」
「(やはり何か失敗してしまったのでしょうか……)」
「(違います。何もないですよ。安心してください。ロズリーヌの料理は美味しいです)」
 もしかしてこちらもイジメて欲しい性癖の人なのだろうか。
「(かしこまりました。何かありましたら、お申し付けください)」
 ロズリーヌは目を伏せてそう言った。
 なんだろう、このまま薫の家にいるとヤバイのではないか、と真琴は思い始めた。
 二人きりになると、真琴はまた話し始めた。
「やっぱり変だよ。聞こえたでしょ?」
「聞こえたよ。マゾってやつなのかな」
「さっき言いそびれたけど、メラニーもあんなふうなんだけど……」
 涼子は口の中の食事を飲み込んで、水を口に含んだ。一息ついて、考えを述べた。
「ということはだよ。まとめるよ。メラニーもロズリーヌも主人の罰を待っているMな人、ってこと?」
「いや、そこだけまとめるの? ボクが思い出したことも含めてまとめるわね。ボクが薫の姿になる時、思い浮かべたのは自分の学校の制服。鏡に写った自分の姿を思い浮かべればいいんだけど、その時薫のことを思い浮かべたみたいね。一番制服の様子が分かるのは他人の着ている制服だったのよ…… その時、もしかしたらメラニーやロズリーヌ達のことも思い浮かべたかもしれない」
「じゃあ、姿が入れ替わっている可能性があるってこと?」
「そうかも」
「入れ替わったら、運転は出来ないよね」
「そうかも」
「魔法のことなんてわからないから、もっと取り乱してない?」
「そうだよね」
 真琴が相槌を打つと、涼子は勝ち誇ったような顔をして、料理を頬張った。
「で?」
 再び涼子の食事待ちになった。
 真琴も慌てて残りの食事に手をつけた。
 グラスの水を飲み干すと、涼子は完食した。
「ということで、姿が入れ替わった説はなし。元々の性質を変えるようなことは思ってなかったとすれば、それもなし。最終的に残ったのは私がさっき言ったことと同じよ」
「薫がどS?」
 涼子は真琴を指さした。
「それを言う? 私そんなこと言った?」
 いや、確かに、メラニーとロズリーヌがMだと言っただけで、薫のことまでは言っていなかった。ボクは発言を統合して端的にまとめただけだ。