私はそのまま肩紐を撫でるようにずらして、マミの胸を見た。
『きれい』
 待ちきれずにそのまま指先から、手のひらへと押し付けていき、その感触に震えた。
『やっぱりおっきいね』
 触っているうちに、マミが快楽のままに声をあげる。
 こんな…… こんな通学路の真ん中で……

「?」
 胸を触ろうというふうにかまえていた手を、私は慌てて下げた。
 しまった…… やっちまった。
「ど、どうかした?」
「なんか、本気を感じる」
「ハハ…… いや、そんなことないから」
「そうだよね〜」
 良かった。
 無かったことに出来た? かな。
 これがこれから寮の部屋に戻るタイミングだったら最悪だ。部屋に戻ってから必要以上に警戒されただろう。幸い、今は学校に行く途中。さっきのことなど、部屋にもどるころには忘れいるだろう。
「それよりさ、今日は転校生くるって話でしょ」
「そうだね、転校生なんて久しぶりだね」
「二週間も転校生いなかったって、久々だからね」
 しかし、寮もこうやって相部屋になってきている関係で、そろそろ転校生も打ち止めか、という話がウワサになっている。
「ま、私も一年前は転校生だったんだけどね」
「後何人受け入れるんだろうね。三人部屋とかになったらどうする?」
 確かに構造上は二段ベッドが二つなので四人まで入れるのだが、当初の説明では一人部屋だった。それが途中で改定されて二人部屋まで、というのが現状だ。再々の改定も考えられる。
「さすがにこれ以上増えるんだったら、寮の裏に立てているのを使うんじゃない?」
「あれ、寮なのかな?」
「新しい子をそっちに入れるのはずるいよね。私達から移りたい」
「新しい寮でも一緒の部屋になれるといいね」
 うっかり本音を言ってしまった。
「え、新しい寮は一人一部屋なんじゃないかな?」
「そうだよねぇ、いくらなんでも…… ハハ」
 何か、妙だった。
 さっきまで歩いていた生徒が、全く見当たらない。
 全員が敵を察知して逃げたか、獲物を見つけて追いかけて行ったか。
 つまり、とにかく、やばい。
 おそらく、〈転送者〉が来る。
「ねぇ、〈転送者〉(あれ)が来るの?」
「そうみたい……ね」
 〈転送者〉(やつら)の出てきそうなところを重点的に、しかし、一点を凝視しないように注意した。
 〈転送者〉は蓋や扉のようなものを利用して出てくる。何故そういう場所を選ぶのかはわからない。能力的には何もない空間からポロッと出てきても不思議ではない。しかし、今まで一度として何もない『空』とかから降ってきたことはない。ドアから出てくるとか、マンホールの蓋が開くとか、そういうギミックからしか出てこない。
 不思議といえば不思議だったが、本物を見たこともないから、信じるしかなかった。
「ここらへん、何があったっけ?」
「さっき15メートルぐらい後ろにマンホール。すぐ右の家のドアと窓」
「じゃあ、その家だね」
 マミと背中を合わせる。出来るだけ死角を減らし、一瞬でも先に把握し、撃破する為に。