その時、メラニーが部屋に入ってきて、慌てて通り過ぎ、玄関へと抜けていった。
「なんだろう」
「慌ててたね」
 そして、玄関先から大きな声が聞こえてきた。
 何か、騒ぎになっているようだ。
「行ってみよう」
 真琴は慌てて部屋をでて玄関へ向かった。
 メラニーが反対側からタオルを持って真琴を見た。
「薫様? 先ほどまでは……」
「?」
 真琴は疑問に思いながらも玄関まで進むと、メラニーの問い掛けの意味が分かった。
「メラニー早くタオル。寒いわ」
「!」
 メラニーは目を丸くしながらも、慌ててタオルを持って玄関へやってきた。そして、薫にタオルを渡しながら、固まってしまった。
「薫様……」
「薫……」
「……」
 濡れた顔や頭を一通り拭い、濡れた髪に取り掛かろうとした時、薫は真琴の存在に気付いた。単なる真琴ではなく、薫の姿をした真琴に。
 気付いたまでは良かったが、言葉を失っていた。
「……」
「えっと……」
 と真琴が説明しようと言葉を考えていると、後ろから、涼子がそっと近寄って来た。
「あっ、薫のニセモノ!」
「いや、そうだけども」
「えっ? あなた誰?」
「えっとボクは……」
 何から説明しようか悩んでいると、薫が言った。
「ボク? ボク? ボク、なの? どうして、真琴が私の姿に?」
 真琴はまだ何から話していいか考えていた。
「ちょっと待ってください!」
 メラニーが急に大声でそう言った。
「あの、あなたはニセモノですか?」
 薫の姿の真琴に、そうたずねた。
 真琴は真剣な眼差しのメラニーにゆっくりうなずいた。
「真琴、さん?」
 もう一度、しっかりとうなずいた。
 すると、メラニーは顔を手で覆って、その場に座り込んでしまった。
「どうしたのメラニー」
「なんでもありません、薫様」
「……あっ、さっきの厳重注意のこと?」
「バカ!」
 涼子が慌てて真琴の口を抑えた。
 メラニーは急に立ち上がって、階段を上がっていってしまった。
「何のこと?」
「いや……なんでもない」
 とにかく、そんな話をしている場合ではない。
 薫が着替えて戻ってくると、薫の姿をした真琴、涼子は居間に入った。涼子と真琴は、これまでの経緯を一部省略しながら話した。
 省略したのは、メラニーの厳重注意とロズリーヌの厳重処罰の件だった。これはイコール薫の秘密でもあると思慮されたからだ。途中何度か真琴が口を滑らせそうになったが、なんとか涼子のフォローによって薫が気づくまでには至らなかった。
「……そう、そんなことがあったの」