「涼子がイタズラしよう、なんて考えなければ薫がずぶ濡れになることはなかったのよ」
「私のせいにするの?」
 涼子はふくれてみせた。
「薫はどんな状況だったの?」
「ドラッグストアから、だよね」
 どうやら、田畑もあの後すぐに逃げてしまったらしい。薫は、ドラッグストアの警備員と店長を説得して、カメラの映像を見せてもらったのだという。
「確かにものはなくなっているんだけど、田畑さんのバッグや、服に隠した、という感じはまるでないの。他にも複数の人がすれ違っているし、田畑さんが犯人とは思えなかった」
 ドラッグストアでその映像を確認していた時、涼子からのメッセージを読んだという。映像確認後にあわてて地下駐車場に行くが、いくら待っても車が来ない。
 メラニーにメッセージを入れると、車は家の車庫にきちんと入れたと返信があり、何故自分を乗せずに出発しているのかという事で厳重注意としたようだ。
「なるほど」
「何が?」
「いや、別に」
 その時、ノックの音がして、ロズリーヌが居間に入ってきた。
「薫様!」
 二人の薫にビックリして、扉から手を離せずに固まっていた。
「どちらが、薫様ですか?」
 薫が手を上げた。
「じゃあ…… こっちの薫様は?」
 ロズリーヌが真琴の方を見た。
「ボク、は真琴です。ごめんなさい」
「……」
 ロズリーヌの目の光が、弱くなったように思えた。
「……薫様、お食事はいかがいたしましょう」
 声も、どことなく暗い感じに聞こえる。
 薫が立ち上がって、ロズリーヌのところへ行き、食事のことを話すと、かしこまりました、と言ってロズリーヌは台所へ戻っていった。
 真琴は涼子に耳打ちした。
「(さっきの厳重処罰、のことかな?)」
「(それ以外ないでしょ! 薫に聞こえるからもうその話題はやめて)」
「?」
 薫は二人の方を振り返って、首をかしげた。
「何かあったの?」
「なんでもない」
 真琴はそれよりもこの姿をなんとかしたい。姿もそうだが、バトンを隠さないと、どこにも行けない、と話した。涼子も薫もどうやって夢のなかでとうがたった魔法少女から普通の姿に戻っているのか覚えていなかった。
 薫が言った。
「難しいワネ」
 涼子が言った。
「あれだよ、ほら、特撮とかでよくあるじゃん。ダメージが大きいと、変身解除するやつ」
「えっ…… それはイヤ」
 薫がポンと手を叩いた。
「あ、そうか、それと同じように、全力を使い切ったら解けたりしないかな?」
「本当に使うべき時に使えなくなってたら嫌だなぁ……」
「今はそんなこと言ってられないでしょ」
「待って。変身が解けないというのは、必然性があるからなんじゃない?」
 涼子は続けた。
「つまり、戦うべき敵が出現しているということよ。例の昨日のTシャツ男、今日のベスト男をやっつけるまで変身解除出来ないのかもよ」