「そんなんなら、ずっとこのバトンを持ってなきゃいけないじゃん。敵は三人いたんだし」
「……」
 真琴が言った。
「思い出した。今日、ここに集まったのは、昨日のことをまとめる、ため、だったよね」
「だから今、それを言う? 優先度が違うでしょ?」
 薫が言葉を繋いでいく。
「まずはバトンを体にしまって、変身状態を解いてもらわないと、その格好のままウロウロされると、私が困る。次に昨日のことを全部真琴に伝える。そうしないとまた無駄な時間が必要になる」
 薫が自身の胸に手を当てて冷静になれとゼスチャーする。
「順番に落ち着いて解決しよう。三人で考えれば何とかなるよ」
「うん」
「このままでも私は困らないけどさ」
 真琴は涼子を睨んだ。
「もちろん冗談だよ」
「魔法少女の変身解除について、ちょっと調べてみよう」
 薫はスマフォを取り出して、何やら入力を始めた。
 待っている間、真琴はバトンを振って宙にクルクルと軌跡を描いた。
 何と描くわけでもなく、だだ変な曲線や丸を描いただけだ。
 何もない空間で、軌跡がキラキラ光っていたが、そのうち消えた。
「これで絵がかけるの?」
 涼子がバトンに興味をもったようだ。
「ちょっと貸して」
 真琴はためらった。
 魔法少女に力があるのではなく、このバトンに力があるのだとしたら、涼子に渡せば涼子が魔法を使えてしまう。さっきまでの状況を考えると、涼子と魔法の組み合わせはとても危険だった。
「……私の変身解除について考えてよ」
「ちょっとだから貸してよ」
 手を伸ばして来たので、真琴は避けるように持ち手を変えた。
「ケチ」
 涼子は興味を失ったようだ。
「真琴、バトンを小さくして耳に入れたら?」
「何それ?」
「腕を取り外して、そこにバトンをしまうとか」
「だからなんなの?」
「バトンさえ隠せれば、後は姿だけを解決すればよいかと」
 黙っている薫は、まだ何か難しい顔をしてスマフォを見つめている。
「変身解除とかじゃなくて、まず自分自身にもどったら?」
「それが失敗したから悩んでいるのに」
「目をつぶってイメージしたらそりゃ薫の姿になるでしょうが。目を開けて、自分自身を良く見ればいいのよ」
「鏡に映るのも薫の姿なのに?」
 涼子がスマフォをゴソゴソした。
 そして真琴の目の前に画面を差し出した。
「ボク? だよね?」
 ……これは体育祭の練習の時の写真だろう。
 姿勢も態度から考えても、ヒカリが映っているような気がしてならない。
「ヒカリじゃないの?」
「姿はかわらないじゃない。これをじっと見つめて魔法を掛けなおせばいいよ」
「バトンはどうするの?」
「家にでも置いとけば?」
「……」
 真琴は言葉を返せなかった。薫が何か言ってくれないかと、少し待ってみたが、まだ何か調べ者を続けているようで、こちらの声は聞こえていないようだ。