二人は現れた〈転送者〉に向き直った。
「これってE体?」
「そんな感じ」
「ナックルダスターを試させて」
「油断しないでね」
 マミはうなずく。
 と、同時にダッシュを決め、左のフェイントから右のボディを決める。
『ぬぉ』
 中の気体が抜けるように音がする。
 〈転送者〉と会話をしたり、声を聞いたものはいない。死体を回収出来たものもいない。
 引き抜いた右手をもう一度中心にぶち込もうとするのをフェイントにして、左手で腕と腕の間のような小さな膨らみで光る、E体の『目』のような部分を狙った。
 すばやい左ジャブがE体を貫いたと思った瞬間。
「あっ……」
 ガス状に体が広がったかと思うと、マミを包み込むような体勢で物体化した。
「マミ! しゃがんで」
 力いっぱいのハイキック、〈転送者〉のない『首』の下にヒットする。
 振り抜いた右足を軸に、後ろから左足を突き出す。
 これも〈転送者〉を捉える。
「ふぉっ」
 そんな、空気が抜けたような音。
 と、同時に急に動きが止まった。
 再びガス化し、二人の周りを回り始めた。
 試しにそのガス体に蹴りを入れると、公子は勢いで足が取られて転んでしまった。
 覆うように回り続けるガス体は、頭の上にも広がり始め、光りを遮り始めた。
「やばい。無理にでも抜けないと!」
 マミは速度の遅い頭の上の方に拳を叩き込むが、何も反応がない。
「じゃあ、やっぱりこっち」
 一番流れの早い正面に拳を打ち込む。
「ダメ!」
 マミが吸い込まれるように流れるガス飲まれ、螺旋を描きながら上空へと巻き上げられていく。この〈転送者〉の弱点…… ガス状態でも本体という部分があるはず。
 竜巻は、中心を大胆に動かして、その渦に巻き込もうとしている。右左、動きを見ながら、調整しながら、細かく移動して避ける。
 ダメだ…… 避けているだけではマミを助けられない。
 何も仕掛けてこないと思われたか、ガスが竜巻の真ん中をくの字に曲げきた。
「うわっ!」
 体を同じように曲げ、ガスを避けたが、スカートの裾が巻き込まれ、ちぎれてしまった。
「待っているだけ、じゃないってことね」
 きっと一番流れが速いところの、その先にいるはず……
 渾身の力を込めて、流れと同じ方向に蹴りを叩き込む。
 そのまま、体を浮かせて足だけをガスの外へ外へと押し出す。
 竜巻の中にケリ足を差し込んだ状態で、その内側をグルグルと回りながら昇っていった。
 けれど、この空気の壁の向こうにいるはず。
「ここ!」
 ガスの流れより速く、足場のない空中で蹴り込む。
 ドン、と鈍い音がした。
 赤く光った〈転送者〉の本体の目が、一瞬足先に見えて、消えた。
「勝った……」
 あっという間に竜巻になっていたガスの流れが緩み、今度は高みから落とされていく。
 空中で体勢を整えると、羽根のように静かに着地し、上空を見上げた。
「マミ!」
 すっと蹴り上がると、更に上空から落ちてきたマミの体にしがみつき、クルクルと回りながら、ゆっくりと地上に着地した。