確かに、薫も変身解除が重要とは言わなかった。『私の姿されていると困る』とは言った。だから、バトンの問題は残るとしても、姿を自分に戻せば少なくとも一つ目の問題はクリアになる。
「……やってみよう」
 真琴は立ち上がって、涼子と向き合った。
 涼子はスマフォをずっと差し出した形で、片膝をついている。
 真琴は差し出されたスマフォの正面に立ち、じっとその映像を頭に入れた。
「聖なるバトンよ」
 両端の透明な宝石のような部分が、キラキラと光り始めた。
 バトンを大きく振りながら、真琴は詠唱する。
「メタモルフォーゼ」
「カッコいい!」
 涼子が興奮して立ち上がった。
 バトンの先端がかすかに涼子に触れてしまった。
 キラキラ光るオーラが涼子を包んで、姿が変わってしまった。
「なんでそこで立つかな……」
 真琴はがっかりと肩を落とした。
 体操着になった涼子はスマフォを使って自身の顔を確認すると、いきなり居間を出ていった。
 調べものが終わったのか、薫の視線に気がついた。
「夢の中でそのバトンを振るのをみて思ってたことを言うわね。その動きって、無駄よね? だからこういう事故になるのよ」
「薫、冷静だね」
「さっき『落ち着いて解決しよう』って言ったばかりだよ」
「おっしゃるとおりです」
 真琴は、聞き慣れない声でキャーキャー騒ぐ声に気付いた。
「これ誰の声?」
「誰って、真琴の声よ」
「真琴ってボクでしょ。 ……じゃなかった」
 真琴は慌てて居間を出た。
 涼子が何をしているのかを考えて、イヤな予感しかしなかった。
 どうやら、浴室の方から声がするようだ。
 真琴が入ると、すでに体操着を脱ぎ捨てていた。
「どうしてそういうことするの」
「興味があるじゃない」
「……」
「好きな人の体なんだし」
「……」
 真琴は少し考えて反撃した。
「今、こんな冗談やってる時じゃないよね」
「……」
「さっきって、わざと立ち上がったでしょ?」
「……」
 真琴は涼子が反省しているように思えたから、これ以上責めるのをやめた。
「……とにかく服を着て」
 後から薫がやって来て、薫の格好の真琴と、下着姿の真琴になっている涼子にと対面した。
「えっ……」
「いや、なんでもないよ」
「薫の姿の真琴が脱がせたのよ……」
「違うよ、薫、涼子が勝手に脱いでたんだ」
 涼子は手に持った体操着で下着を隠すようなしぐさをした。
「どうしてそんな酷いウソをつくの……」
「涼子、冗談はやめて」
「自分と真琴を客観的にならべるとこう見えているのね……」
 何か興味をもってしまったようだった。