校門にいる警備員が普段の弛んだ表情ではなく、いつになく厳しい表情で車を見つめている。
 私はその二百の意味が理解できなかった。車の最高速度とかを聞かれたと勘違いしているのだろうか。それとも身長と間違えて答えているだろうか。お相撲さんだって平均体重は百五十キロといったところか、そう考えれば、この体のバランスで二百キロはありえない。
「あの、体重」
「二百」
「ですから」
「聞こえてる」
 声の調子は変わらないのに、鳥肌がたつような獣の気を感じた。
「すみません」
「分かってくれればいい」
「君だって体重を聞かれたくないだろう」
「はい」
 本当に体重を聞かれたくない。体重のことを聞くのはセクハラとか、そういう意味だけではない。
 そんなことを話している間に、車は現場についた。
 現場には鑑識課員が数名いて、盛んに記録をつけていた。
「君は車から降りなくていい。その代わり、番号非通知でここに電話して」
 電話を掛けた。
 刑事はすぐに電話を取り、車から降りると、ヘッドセットを接続して、話しかけてきた。
『〈転送者〉が現れたのは? どこ?』
「そこの側溝の蓋です」
 刑事が道を進んでいく。
『そっちから見えるか?』
「見えます。もう少し左です」
『これか? ここも蓋が吹き飛んでる』
 〈転送者〉が竜巻になった時、周りにあった様々なものを巻き上げてしまったのか。
 マミのことで周りの様子までみえていなかったが、確かに様々なものが削りとられたようになっている。
 マンホールの蓋や、家のガラス類も粉々だ。
『(出現箇所がここ、という証言があるんだが)』
 私にではなく、刑事が周りの誰かに何か説明しているらしい。
『ありがとう。後は〈転送者〉が倒れたのはどこになる?』
 もう一度マミと一緒に戦った時の事を思い出した。
 〈転送者〉の竜巻に飲まれた状態になってからは、辺りの風景はまともに見えていない。
 巻き上げられたマミが落ちてくるところを捕まえた以外、ほとんど記憶に残っていない。
 いや…… あると言えばあるのだが。
『どうだ?』
「ここからじゃ分からないです」
『どういうことだ?』
「……」
 しまった。
 余計な言葉に気づかれたのかもしれない。
『……わかった。ちょっとまってろ』
 通話が切れた。
 刑事はまた周りの人と話しをしながら、タブレットを持って車に戻ってきた。
「このタブレットで現場周辺を俯瞰出来る」
「なんの映像ですか、これ」
「ドローンだよ」
 警察もドローンのようなマルチコプターを使った空撮をするんだ、と感心してしまった。
「このあたり? 右とか左とかは?」
「ちょっと左をみたいです」
 刑事が車の無線機を取って話す。
「左に振って」
 映像が変わる。
 そう、ここだ。この裏側あたりだった。
「ここです」
「そこで静止して」
 刑事はタブレットを引き取ると、指をさした。
「この辺り?」
 私は頷いた。
「わかった。もうちょっとだけ待ってて」
 車から出て行くと、刑事の持っているタブレットに人が集まってくる。
 鑑識の人が、タブレットで指示した場所へ小走りに向かった。
 しばらくすると、何かを見つけたらしく、刑事が誰かに指で丸の形をつくった。
 刑事は車の方に戻ってきて、乗り込んだ。
 例によって車は凄く沈む。
「ありがとう。助かった。今から学校に送っていく」
「この道、しばらく通れないんですか?」
「学校が終わるころには通れるようになっている予定だ」
 車がバックすると、方向を変えた。
 学校の方に向くと、モーターから急にガソリンエンジンに切り替わったのか、音を立てて加速を始めた。