「(ねぇ、じゃあ、キスはしないから、ちょっと体をさわらせて)」
「(やだよ……)」
「(じゃあ、ちょっと裸をみるだけ。みるだけだから)」
「……」
「(ねぇ、いいでしょ? 私のもみせたげる)」
「(ボクは別に見たく)」
「(……そりゃ、私のことなんか興味ないでしょうけど。露骨に嫌がられると悲しいよ)」
 涼子が顔を押し付けてきた。
 ボクは慰めるために抱きしめた。
「(ね、ちょっとだけ)」
 顔を近づけてくる。キスをせがんでいるようだった。
 目を閉じて涼子のかわいい唇が目の前に出されると、自分の意思とは関係なく、唇を重ねてしまいそうになる。
 そう思っているうちに、少しベッドが揺れれば唇が触れてしまいそうな距離になった。決断をしなければ……
 考える間もなく、唇を重ねていた。
 涼子がつけてきたのか、ボクが最後の引き金を引いたのか、もう分からなかった。
 お互いの唇を端から端までなぞるように触れ合った後、涼子の下唇を噛むように挟んでから、そのまま舌を差し入れた。
 甘いくちづけの時間。
 どちらの唾液なのかもう分からないまま、小さく漏れる吐息と、絡め合う舌が時折音を立てた。
 全く考えを決めないうちに、どんどんと行為だけが進められていく。
 毛布の中ではも互いの部屋着は脱ぎ捨てられいた。
 今、まさに体中で涼子と触れ合っている。
「(ちょっ、ちょっと待って)」
「またないよ、もうがまん出来ない」
「(ちょっと、涼子声大きい)」
 こっちが言っている間にも涼子はボクのブラを外してしまう。
 一瞬先に舌先が触れたと思ったら、涼子はそのまますぐに唇を吸い付けてきた。
「(あ、あっ…… そんなに…… あん…… 強く吸わないで)」
 気持ちでは止めたいのに、体の感覚はそのまま突き進めという。
 違う。これは気持ちが受け入れているから、体が反応するのだ。
 言わなければ、いけない。
「(違う。気持ちは受け入れてない)」
 涼子は私の胸から顔を離した。
「……」
 毛布の中では暗く、その表情を確かめることは出来なかった。
「(いいよ。私はそれでもいい)」
「(どういうこと?)」
「(いいじゃん。そんなこと。分かっているから)」
 涼子はボクの手をとって、涼子の大事な部分へ導いた。
 その柔らかい部分をどうすれば気持ちいいか、ボクも良く知っていた。
「(ああ……んっ、そう、気持ちいい)」
 言葉と吐息とが交じり合ったような声だった。
 ボク達はそうやってはてるまで体をすりつけあっていた。
 満足そうなほほ笑みを浮かべると、涼子は「おやすみ」と言って目を閉じた。
 ボクは涼子の寝息を聞きながら、天井を見つめていた。
 何か重要なことを考えていたが、疲れたと思った途端、すぐに目を閉じてしまった。

 涼子は撮影がある、と言って食事もせずに家を出てしまった。ボクは母と朝食をとっていた。
「どうしたの? 涼子ちゃん帰っちゃって寂しいのはわかるけど」
「涼子には明日も会えるよ。そういう事なら、なんとでもなるんだよね」
「なんとでも、というハズないでしょ。昨日やったこと、今日やることで明日のやれることは変わっていくのよ」
「……」
 昨日やったこと、で明日のやれることが変わるのか。ボクが昨日涼子としていたこと、は未来に影響するだろう。ボクはそういうことと知っていて、抵抗しなかったような気がする。
 薫がメラニーと関係していたことが許せなかったのだろうか。復讐心のようなものがどっかにあったのか、と考えても分からない。