「なに? 二人とも妙に気があうじゃん」
 マミの顔をみると、少し赤くなっているような気がした。
「さっき泣いてたのと関係あるでしょ? ねぇ、何で公子泣いてたの?」
「いいじゃない」
「秘密よ、秘密」
 そう言うので、私はマミの顔を見た。
「ねぇ〜 公子、秘密よね?」
 マミは顔をかしげ、て同意を得ようとしていた。
「そうだよ、秘密だよ」
 そう返すと、マミは笑顔になった。
 私はそれを見て、もう何もかもを投げ出してマミに抱きつきたくなった。
「なによ、それ。あんまり秘密秘密いうなら、二人の関係、調べちゃうから」
 スマフォを引っ込めると、神代は立ち上がった。
「ま、とにかく佐津間も悪い奴じゃないってことで、よろしく」
「そんだけ?」
「そんだけだよ。それに仲の良い二人の部屋に長居しても悪いし帰るね」
「神代さんありがとう」
「気にしないで」
 ドアから頭を出して、去っていく神代に手を振った。
 向こうも一度振り返って手を振り返した。
 部屋に戻ると、マミが言った。
「転校生ってその一人だけ?」
「今回は一人だったね」
「さっきの写真だと、背は高いって感じじゃないね。どれくらい?」
 妙に転校生のことを聞くな、と思った。
 趣味じゃないんじゃなかったのかな。
「私よりは大きいけど、マミよりは小さいんじゃない?」
「鶴田よりは大きいんだ」
「うん、そうだね。鶴田は私ぐらいでしょ?」
「ふぅーん」
 なんだろう、何を考えているんだろう。
「確かに木場田達に囲まれてたよ。仲良くやれそうな感じ」
「スクールカーストの上位の方なのか」
 私はこのスクールカーストというヤツが良く分からない。カーストの下だからといって、別にクラスの奴隷のように働かされているわけでもない。単に発言の影響力が弱いだけだ。それに、カーストの下の人間は別にクラスへ影響を与えられなくとも、やっていっていける。どちらかというと『クラス』という集団に依存しているのはカーストの上の方の連中なような気がしてならない。
「まだわからないよ。第一印象、そんなに明るい感じでもないしさ」
「ふぅーん」
 なんだろう。何が知りたかったのだろう……
 もしかしたら、マミは木場田や鶴田あたりに興味があるのかも知れない。妙に彼らの行動を見ている感じだ。
 マミはそのままベッドに横になった。
 私は机の上に置いてある時計を見た。
 お風呂までには時間がある。
 今日、何もなければどうなっていたかを考えていた。
 私とマミは、今日〈鳥の巣〉の中へと入るつもりだった。
 避難区域にしていされている〈鳥の巣〉の中の市町村は、全員が避難しているが、人が完全に住んでいなくなったわけではない。某システムダウンを復旧する為に、日々人が入り、そして交代の為、人が出ていっている。
 普通なら、遠隔業務で対応するIT業務でさえ、某システムダウンのせいで〈鳥の巣〉内のコンピュータシステムまで直接作業者が足を運ばないといけないのだ。もうかれこれ5年もやっているから、遠隔地から出きてもよさそうなのだが。
 恐らく外部ネットに接続出来ない、特殊な理由があるに違いない。
 某システムダウンの中心にそびえ立つタワー。
 避難区域にある、今は使えない国際空港。
 逃げ遅れた人がいるに違いない。
 何が起ったからすら判らなかった。遠くに煙が立ちのぼっていた。
 線量だの、発光があったとか、きのこ雲だとか、大人達は恐れていた。
 私はまだ子供だった。それに空港についたばかりで、何が起こったか全く理解できていなかった。いや、今でも報道は制限され、ごく一部を除いて映像は流れない。ネットで探してもないのだから、本当になかったと勘違いするひともいるだろう。逃げ遅れた人が何人いるかも、正しい発表はない。
 一緒に空港に降りたはずの友達。
 なのに、いなくなってしまった友達。
 完全にその部分の記憶を失っている。私を私じゃなくしているような、何か、とても大事なものが欠落している。それが〈鳥の巣〉にあるはずだった。
 加えて、某システムダウンと同時に出現し始めた〈転送者〉のことや、自分に起こった異変。それらすべてが原因がこの〈鳥の巣〉の中心にある気がしていた。
「公子…… どうしたの?」
「えっ、なんでもないよ。次のボランティアのこと考えておかないとな、って」
 全くこころにもないことを話してしまった。
 けれど、それはそれで考えなければならないのは本当だった。百葉高校では、ボランティア活動が成績に影響するのだ。