痛くないように、そっとなでるように上下に動かす。
「にゃははは…… 公子、くすぐったいよ。もう少し強くしないと汚れ落ちないんじゃない?」
 思いもよらぬ反応に、気持がたかぶった。
「ちょっと変った洗いかたしてもいい?」
「えっ?」
 私は少し手順を飛してしまった。
 自らの体にボディソープを塗りたくって、マミの背中に押し付けていた。
「ちょっと…… それ何のつもり?」
 すぐに冷静さを取り戻したが、してしまったことは元に戻らない。
「気持いいけど、それってやばくない?」
「そ、そうだよね」
 気持いいことは、いいんだ。『キモイ』って言われるかと思ってた。
 急にマミが振り返った。
「ほら!」
 振り向いたマミは、私の胸のぽっちを触ってきた。
「あっ…… ん」
「公子の、立っちゃってるし、擦れて赤くなってるよ。あんなことしちゃだめ」
 他人(ひと)に触られるの初めてだけど…… 気持いい。
「(もっとさわって)」
 私の声はたぶん、聞こえないくらい小さい声だったのだろう。
「普通にボディタオルで擦っていいからね」
 マミは再びもとの向きに戻った。
 私は悪ふざけをすることなく、しっかりと背中を洗った。
 何度となく『おっと手が滑った』と言いかけたが、言葉も手も、必死に抑え込んだ。
「ありがとう。今度は私がしたげる」
 ああ…… この言葉が違う意味だったら……
 そう思いながら、小さくうなずく。
 調子に乗って『痛くしないでね』と言いかけた言葉を飲み込む。
 背中をマミに向けた瞬間、大きな問題に気付いた。
「ご、ごめん!」
 私は慌てて立ち上った。
「痛っ…… ど、どうしたの? 公子」
「マミ! 大丈夫?」
 マミは椅子から落ちてしまって、仰向けに倒れている。
「頭打たなかった?」
 私はひっぱり起そうとして片膝をついて、マミの脇に手を差し入れた。
「うん、頭は打たなかったよ…… 公子…… 何をしようとしているの?」
「え? 何って起してあげようとしてるんだよ?」
「抱きかかえては起せないんじゃない?」
「そうかな…… もう少しやってみてもいい」
「あっ…… ん…… ちょっ…… ちょっと」
「えっ、あれ?」
「当ってる…… あんっ! ねぇ、公子、わざと……」
「えっ、え?」
 いや、わざとだ。
 無意識のエロがマミのおまたにふとももを擦り付けろ、と命令したのだ。
「あっ、ほんとだ。ごめん」
 私は少し体を離して、マミの腕を引っぱった。
「本当に何? 背中洗わなくていいの?」
 うなずいた。
「代りに」
「かわりに?」
「代わりに前を洗って」
「?」
 あれ、言葉に出してしまった……
「いいけど、前は自分で洗えるんじゃない?」
「そ、そうだよね」
「?」
「どういうこと?」
「だから、いいけど」
 洗ってくれるということか。私は気持をあらためた。
「じゃあ、お願い……」
「うん。じゃあ、座って」
 ヤバすぎる。ちょっとじゃすまない。半分、いや、完全に変態の域だ。
 言ってしまった自分と、最後の最後にお願いしてしまった自分。
 どちらの自分も最低だ……
 マミは私が頼んだ通り、前を首筋から胸、脇腹、お腹、そして下腹部へと、順番に、丁寧に洗っていった。
「あっ……」
「あ、強かった? ごめん」
「違うの、そういうんじゃなくて、なんか変な気分……」