『神田さんの奪回は諦めるということ? 次は倍、その次は倍々だぞ。ここで逃したら、後はない』
 しかし、ずっと更衣室にいたら先生がやってくる。これだけの人数をこの部屋に閉じ込めておくことは出来ない。
「ちょっと、私の体操着から出て行きなさいよ」
 神田本人の声だった。
 いや、これはエントーシアンが支配している状態の神田だ。このままエントーシアンが本人の代わりにこの世界に入り込んでいってしまう。
『冷静に思い出してみて。何故今神田がエントーシアン化しているのか。多分なにかきっかけがあったはず』
 ボクは落ち着いて今日の出来事思い出すことにした。
 多分、ボクが覚えている限り、エントーシアンを意識したのは、騎馬戦の時だ。
『騎馬戦』
『騎馬戦って、あの、手をつないだり離したりした事?』
 そうだ、あの時、ヒカリに言って、手を離してみたはずだ。薫が倒れる前に、慌ててつなぎなおした。右手側が神田さんだった。
『あの時は確実に神田さんの世界だった』
『じゃあ、右手? 右手と右手でつながったわけでしょう?』
「だから、何してんのよ! 早く出て行け」
 神田は体操着の上から、ボクを叩いてきた。
 叩いてくる神田の右手をつかみ、手と手を合わせた。
『どう、入れない?』
 ヒカリの姿は見えない。
『どうなの?』
 存在自体を感じない。
 もうとっくに神田に入ってしまったのだろうか。
『もうこっちでなんとかするしかないか』
 ボクはヒカリのアシストが得られないことで、あることを決意した。
 田畑まさみを救う時、肉体からの刺激で本人の意識を起こした。それと同じことをしないと、現時点での神田は支配力が強すぎて、入り込むことが出来ない。
 右手を体操着の中に入れ、神田のブラをずらす。
「やめなさ……」
 神田の声が止まった。
 ずらしたところから露出した胸を、何度も舐め取るように舌を這わせる。
「あっ…… あっ……」
 神田の体がのけぞるように震える。
 左手の拳が開いて、ボクは指と指を絡め、ぎゅっと手を握った。
 何度かのけぞったタイミングで、神田の背中に手を入れ、完全にブラを外す。
 重力で広がった乳房が、ゆるりと震えた。
 ピンク色の先端をぱっくりと口に含み、舌と唇で絞るように吸い付くと、神田は吐息のような声を上げた。
「ん…… ふっ……」
 咥えた口の中で、真空を作るかのようにぎゅっと吸い込むと、再び神田が歓喜の声を上げる。
 さあ、これで入れるだろうか。
 ボクは口を離して、頬で神田の肌の感覚を確かめると、目をつぶって夢に入ることを試みた。
『やめなよ』
 ぼんやりと頭上方向に人が立っているのを感じた。
『なんのこと?』
 あえてそちらの方向をみないようにした。
『そんなことをしたって、中には入れないよ』
 ボクは左の胸に吸い付きながら、右手の指先で乳首を転がしていた。
 遠くに神田のあえぎが聞こえる。
『この声が聞こえない? 入るのは時間の問題ね』
 高い場所から、人が飛び降りてきた。
『何をしているの、もういいかげんやめなさい』
『あなたもして欲しいのなら、してあげる』
『ふざけないで』
 ボクの頬を叩いた。
 真っ赤な色の髪をした、神田と瓜二つの人物。
『やっと現れたね。ボクは君を待ってたんだよ』
『違うでしょう? あなたは夢の中に入ることを考えていたはず。ならば、ここは神田の夢の中ではない。あなたの負けよ』
『違う。ボクはお前を倒しさえすればいい。エントーシアンの支配から神田さんを救えればいい』
『……私を倒す、ですって。ヒカリもいないあなたに何が出来るの?』
 確かにさっきからヒカリの気配がしない。
 エントーシアンに弱みを握られてはつけこまれる。ボクは虚勢をはった。
『あなたを倒すのにヒカリは必要ないわ』
『騎馬戦でも、リレーでもヒカリがいなければ何も出来ないクセに?』
 神田はバカにしたように笑い始めた。
 ボクはカッとなった。
『どんな状況かしらないクセに!』
 ボクはとっさに神田の首を締めていた。