「さすがに、接着はされていないんじゃないかな?」
 マミも良くみているが、私以上の見解もなかったようで、何も答えなかった。
「うん。大丈夫。ミハルは大丈夫だよ」
 何の根拠もなかった。
 けれど何か、確信していた。
 カチューシャを外さなくても大丈夫だと。
「……どうしたの急に」
「なんとなく。この寝顔で大丈夫な気がする」
「じゃ、この手足は解くの?」
 私は悩みながらも、首を縦に振った。
「よし。私もキミコの判断に賭ける」
 私達は縛っていた手足を解き、掛ふとんを直してあげた。
 食事の時間が来たのでミハルを起こそうとしたが、全く反応しないので、二人で食堂へ行った。
 おしゃべりもそこそこに食堂から戻ってきたが、ミハルは全く起きる気配がなかった。
「ミハル? ご飯だよ?」
「ミハル、お風呂も時間制だよ?」
 二人で色々と話しかけるが、寝たきりだった。
 私は時計を確認した。
「どうしよう。本当にお風呂の時間だよ」
「ひん剥いてタオルで拭いちゃう?」
「マミ、本気で言ってる? セクハラだよセクハラ」
「セクハラより酷い気がするけど」
「なおさらダメじゃない」
「一日ぐらいお風呂入らなくったって死なないわよ」
 お風呂の時間帯はしばらく変わらない。
 この前と同じ、女子寮内の一番最後の時間帯だ。ミハルが居なければマミとまた洗いっこできるかもしれない。現実的にはその方が私に取って嬉しいことだった。

『マミ、じゃあそろそろお風呂行く?』
『……』
 マミは無言で立ち上がった。
 薄くて柔らかい部屋着を着ているせいか、マミの身体のラインが目に飛び込んできた。
『行こう、キミコ』
 差し伸べられた手に触れると、私は強引にひっぱりあげられた。
『えっ……』
 立ち上がった私をぎゅっと抱きしめる。
 私とマミの間には、互いの部屋着一枚があるだけで、すぐ近くで柔らかい肉体が触れ合っている。
 気持ちいい。
 こうして抱きしめられると、全てを告げて、友達から恋人の関係に進みたくなる。けれど、マミが女性を好きなのか確証がもてない。
『キミコって良い匂いがする』
『えっ…… お風呂入る前だもん、そんなことないよ……』
『ううん、良い匂いだよ』
 首筋にマミの息がかかる。
 唇が近づいているのだ。
『舐めてもいい?』
『えっ、どうして、そんなところ、汗臭いでしょ?』
『いい? それともダメなの? 私に舐められるのはイヤ?』
『そんなことないよ…… そんなこと……』
 良い、と言う前に、マミの舌が私の首筋にふれていた。
『あっ……』
 思わず声をだしてしまった。
 自分の声の意味に気づき、顔が熱くなった。

「マミ、じゃあそろそろお風呂行く?」
「……」
 ミハルが立ち上がってマミの手を取る。
「えっ……」
「……」
 ミハルは無言のまま、私の手も握ってきた。
 なんなんだこの娘(こ)は。
「お風呂いく」
「ミハル? 起きたの?」
「起きたみたいね」
「起きたわよ。何かものすごい思念波を受けたせいで目が覚めた」
「はぁ?」
「思念波で通じないなら、言い換える。『エロい妄想』を感じたせいで目が覚めた」
 私は顔が熱くなった。
 可能なら、これが気付かれないように、と思って顔を伏せた。
「何言ってるのかわからないけど」
「分からないひとは関係ないのよ」
「なんだか失礼ね」
「それより三人でお風呂に行きましょう」
 ミハルはそう言うと、手を離してお風呂の支度をした。