断る理由もないし、今日お風呂に入れる時間はここしかない。お風呂の用意をして、廊下に出た。部屋に鍵をかけて、私はいつものマミの後ろの位置で歩き始めた。私の後ろにミハルが歩いている。
 マミが後ろを振り向いて言った。
「ミハル、そのカチューシャだけど、お風呂では外すの?」
「……」
 ミハルは答えなかった。
 また例のカチューシャスイッチが入ったようだった。無駄なことに答えない。会話は積極的にしない、昼間のミハルだ。
「ミハル、カチューシャ外さないと頭痒くならない?」
 私は外さない前提でそうたずねた。
「……」
「何か答えたら? ミハル。そんな感じだと疑われるわよ」
 私はいつものようにマミのお尻からふともものラインを見ながらそう言った。
「!」
 いきなりミハルにお尻をなでられた。
「なにすんの!」
 私が立ち止まると、マミも振り返った。
「どうしたの?」
「……」
 ミハルは無言でこちらを見つめるだけだった。
 突っ立っていても仕方ないので、私達は再び歩き始めた。
 お風呂上がりの女生徒達とすれ違った。
 マミがその娘(こ)に手を振る為に、少し上体をひねった。
 私はその胸の膨らみを凝視していた。
「!」
 今度は胸を鷲掴みにされた。
「だから!」
 私がミハルの手を払いのけると、マミも今度は見ていたようだった。
「ミハル、なんでキミコの胸触るの? びっくりしてるじゃない」
「……」
 私は胸を抑えながら、マミの後ろに回った。
「ねぇ、答えなさいよ」
「……」
 ミハルは私を指さした。
「何なの?」
「……こいつが考えてることをしてみた」
「!」
 私は恥ずかしさと憤りに言葉が出てこなかった。
「何を言ってるの?」
 マミはなんのことか分かっていないようだった。
 ミハルは私の思考を読んだとでもいうのだろうか。私がしたい、と思ったことを、実行に移したとでもいうのか。
「そうだよ」
「だから何のこと?」
 マミにはわからないだろう。
 確実にこっちの思考を読み取っている。
 理屈は全く分からないが、私がマミを見て思ったことを身体で表現したのだ。
「こいつがあんたに……」
 私は急いでミハルの口を塞いだ。
 さすがにそんなことを言ってマミが気付かないわけもない。
「ミハルはやっぱり何か混乱してるのよ。ほら、早くいかないとお風呂の時間なくなっちゃうよ」
 私はミハルの手を引いて、お風呂場へ急いだ。
「あっ、キミコ待ってよ」

 私達は脱衣所で黙々と脱いで、カゴに入れていた。
 お風呂を終わって出ていく娘(こ)達は、互いにお話しをしていた。いつもなら肌艶や胸の膨らみ、お尻やふとももの曲線などを眺めながら、ゆっくり脱ぐくせがついていた。私は余計な妄想をミハルに読み取られないようにする為に、それらを見ないようにうつむき、何も考えないようにしていた。
「キミコ、どうしたの?」
 そう言って触れてきたマミの身体を見ても、欲情してはいけない。ミハルに感づかれてしまう。
「なんでも、ない」
「だっていつもと違うよ、なんでもないわけないじゃん」
「……宿題のこと考えてる」
「ミハル、突然なんのこと?」
 やっぱり私の考えを読まれている。
 胸の突端を弄り回して、悶えさせたい、なんて考えたら大変なことになっていた。
「キミコ?」
「なんでもない。お風呂入ろう。宿題あったっけ? あったならやっとかないと佐藤に怒られるし」
 私はマミとミハルを見ないように、急いでお風呂場へ入った。