空港施設と同じ高さに飛びながら、中に何か警報や、軍の姿がないかを確認した。
 搭乗ゲート24A。
 ここだ。
 私は地上に降り立つと、翼を体にしまった。
 天井が高い部分では役に立つが、殆どの部分で邪魔になる。足先の力だけを使って〈転送者〉を貫くつもりで戦わなければならない。
 開いている入り口から中に進む。
 天井から突きでいているカメラの方向を意識ながら、映ったとしても人と分からないように物陰を作って移動する。
 どこにメモリを置いたのだろう。
 このまま〈転送者〉と会わずに済めば、戦わずに済む。
 机の上や置きっぱなしのパソコンをみるが、それらしいカードはない。
 ミハルが見せたメールには、某航空の受付カウンターと書いてあった。
 ここは搭乗口24Aだ。ここは航空機と接する側で、某航空会社の受付カウンターではない。
 ここから逆に進んで、某航空会社の受け付けカウンターまでこい、ということか。
「プッ、ププププッ」
 機械的な破裂音が聞こえる。
「シュー、プッ」
 気体の圧力が変わる音。
 これは〈転送者〉だ。
 私は身構えた。
 しかし、どこの物陰からも〈転送者〉は現れない。
 扉のようなものもない。
 〈転送者〉の音ではなく、施設の稼働音だったのだろうか。
 ゆっくりと廊下を進むと、構内の案内図があった。
 そうだ、思い出した。
 航空会社のカウンターって…… 確か……
 チケットを確認してもらったり、そこで父親が荷物を預けたりしていた場所。
 様々な航空会社の受付が並んでいた。
 広いフロア、高い天井。
 そして、今、ここで〈転送者〉が仕掛けてこないのは、そこで私を試そうとしているせいなのではないか、と思った。
『我々はお前の力を知りたい』
 ミハルが〈扉〉の支配者と名乗る者の声を代弁していた時に、そう言っていた。
 そうなのかもしれない。
 急ごう。
 今度こそ、あの時の記憶を取り戻そう。
 私は暗闇の中を走った。
 同じ距離を保って、何者かが追ってくる気配を感じながら。

「いいのですか?」
「何のことだ?」
「屋根の低いこのエリアで襲わせないと、今までの戦闘履歴からすると」
「我が方の〈転送者〉が負けるとでも言いたげだな」
「……その通りです。正直に話してください。何か理由(わけ)があって、この娘(むすめ)に勝たせたいのですか?」
「……」
 男は返事をせずじっと〈転送者〉からの映像を眺めていた。

 金属探知機のゲートがを抜けると、急に天井が高くなった。
 背中に力をいれると、勝手に翼が広がる。
 自分が出てきた辺りを見返すと、黒い身体に赤い目の〈転送者〉が1、2、3…… 6体、出てきた。
「まさか、ここに追い込むつもりだったの?」
 いや、〈転送者〉にとって不利なここへワザワザ追い込む訳はない。
 何か罠があるのかもしれない。
 一体の〈転送者〉がガス状になって舞い上がってきた。
「そういう手があったか」
 私がホバリングしている高さにくると、こちらの羽ばたきで流されてしまう。
 張り出してた三階のフロアで再度固体化し始めた。
「もらった!」
 その〈転送者〉が固体化するまでが余りに遅かった。
 翼で加速すると、次の瞬間には、中心に現れたコアを蹴り壊していた。
「後5体っ!」
 床の方で〈転送者〉は奇妙な音をたてて、変形し始めた。
「シィー、シュシュシュ……」
 黒い煙が吹き出したかと思うと固体化した。
「羽根が生えた?」
 〈転送者〉はバタバタと音を立てて飛び上がった。すると、その羽根をつけた〈転送者〉二体は、ホバリングする私を挟むように回り始める。
「空中戦で負けるわけには」
 上昇したり、地面スレスレに急降下しても、〈転送者〉はトレースすように両脇についてくる。こちらが止まると、こっちを中心に飛び回る。
「戦えないの? それとも、こっちが仕掛けるのをまってるの?」
 答えるわけもない。
 が、〈転送者〉は全く仕掛けてこない。
 こちらから何かフェイントをかけて、様子をみるしかない。
「!」
 左サイドにいる〈転送者〉を狙って速く移動すると、背後を取ろうというのか右サイドが動いた。
 こっちが、サッと体勢を戻すと、右サイドの〈転送者〉はまるで何もなかったように同じ距離に戻る。
「そういうこと……」
 おそらく右に迎えば左が動くだろう。
 こちらが動かなければ、挟み撃ちしてくるかもしれない。