「何? 何してたの?」
 ミハルは木場田と佐津間に挟まれるようにして、膝をついて座っていた。裸ではなかったが、シャツを直しながら、ボタンをはめているところだった。
「あんた達、ミハルに何したの!」
「何もしてないって」
「……」
「佐津間、あんたは何でなにも言わないの?」
「……」
 かちゃかちゃとズボンのベルトを直すばかりで目を合わせようとしない。
「ミハル、大丈夫だった?」
 マミがミハルを抱きしめる。すると、ミハルもマミに体を預けるようにして抱きしめた。
「……」
「|白井(しろい)誤解だ」
 木場田が両手を左右に振った。
「多分だけど、相当誤解している」
「何が誤解なのよ!」
「こら、授業始まるぞ! 早く教室にもどれ」
 そう言って、私が入ってきた反対側の扉から、担任の佐藤が顔をだした。
「はい! すぐ戻ります」
「ほら、白井も、木更津も戻ろうぜ」
「……」
「……誤解だって」
 とにかく、今は教室にもどろう。
 木場田や佐津間を問い詰めるのは後回しになった。
 ミハルが何か喉につまらせたように咳込んだ。マミが背中をさすっている。
 教室に着くと、担当教員が来ていて急いで席についた。


『おい、館山、お前フェラ上手いんだってな』
『知らない』
 木場田がミハルを突き飛ばして座らせる。
『お前の元カレってやつが、サセ子だって言ってたってんだよ』
 佐津間は自分のモノを出して、自分でこすり、勃起させる。
『ホラ、やってみろよ』
『イヤッ!』
『やれって言ってんだよ!』
 木場田の大きな声で、ミハルの小さい体がふるえる。
 目の前に突き出された佐津間の小さいモノを、おそるおそるミハルが触る。
 ピクッ、と佐津間のモノが反応する。
『ほら、まずはペロッと』
『鶴田は見張りしてろって』
 遠くから鶴田がもの欲しそうな顔で見ている。
 ミハルは言われた通り、舌で佐津間のものを奥の方から先端へ舐め上げた。
 先端の方は何か濡れている。
『うっ』
『そうろうかよ』
『いってねーよ』
『気持ちいいのかよ』
 佐津間のその小さいモノは、ちょっと前より太く、固く、そそりたつようになっている。
 ミハルはよく分からずにそこを指でしごいていく。
『そろそろフェラってくれよ』


「どうしたのキミコ。大丈夫?」
「|白井(しろい)息が荒いぞ」
 教室中の視線が集まっていた。
「い、言え、ちょっと戻ってくる時に走ったせいで、まだ……」
 ちょっとは走ったけど、本当にそれくらいで息づかいが荒くなるものか、と思ったが、わざとらしく呼吸と整えるように深呼吸をしてみせる。
「予鈴がなったら教室にもどる。それをしていれば走る必要なんてないんだ」
 いや、だから…… ちょっと変な妄想をしてしまって興奮してました、なんて言えるか。
 チラッとミハルの方を見た。
 以前、ミハルは|他人(ひと)の考えることを読み取ったことがあった。
 今、この妄想を読まれるとまずい…… そう思ったのだ。
 幸い、ミハルは私のことなど全く気にせず、じっとタブレット端末をみつめていた。
「……話しを戻すぞ。こうして、今も各国の某データセンターの建設を進めている。我が国ではその途中で『某システムダウン』の事故が起こってしまったんだがな」
 その『某システムダウン』の跡地が〈鳥の巣〉だ。
 ことの発端は、この〈某データセンタープロジェクト〉だった。
 全人類の『全ての叡智』を記録する場所。