いや、伝わっているのか、そうでないのかちゃんと言葉に出して確認する必要がある。
 それが今か、と言われると自信がない。
 もう少し仲良くなってから……
 いつもそう思う。
 私とマミは駐車場の列に並んだ。
 行きは同じ時刻なのでクラス毎になるのだが、帰りは部活などでバラバラになるので、いろんな学年の人が並んでいた。
 列に並んでいると、マイクロバスが寮から戻ってきて、列の先頭のところで止まって扉を開けた。
 順に乗り込んでいって、私とマミはちょうど後ろのタイヤの上辺りの並んだ席に座った。
 大きな音のエンジンが掛かって、扉がしまりかけると、私達を見つけたように三年男子の先輩が私達の前に座ってきた。
「……」
 なんだろう。
 話しかけてくるのか、と思ったけど。
「|白井(しろい)、館山ミハルは? 一緒じゃないのか?」
「ミハルは何か用があるって、学校に残ってるんです」
「……じゃあ、もし知ってたら館山の連絡先、教えろよ」
 ……あれ? ミハルの連絡先って交換したかな?
 いや、そうじゃない。教えろって言われて教えるようなものじゃない。
 怖かったが、怒った顔をつくってみせた。
「本人に聞いてください」
「冷てぇな。ま、そうするしかないか。じゃあな」
 ガタガタと車内が揺れるなか、先輩は前の方の座席に戻っていった。
「誰?」
「名前は知らない。三年の人だよ」
「三年生から連絡先聞かれるなんて、ミハルは一体なにをやってるんだろう」
「……」
 確かに、ミハルの行動はおかしい。
 普段から|他人(ひと)の言うことはきかないし、勝手に一人で行動してしまう。
 協調性がないだけでなく、何を考えているかわかりにくいから、すべての行動の根拠がわかりにくいのだ。

 バスはまず男子寮につき、男子を全員降ろした後、女子寮についた。
「マミ、私ミハルのことが心配」
「……けど、本人が言うこときかないし」
 私達は寮の部屋に向かいながら、色々と話しあった。
「マミ、ミハルを探偵しよう」
「えっ……」
「尾行。こっそり後をつけよう。それならいい?」
「やばくない?」
「けどそうでもしないと絶対自分のこと話さないもん」
 それしかない。
 今日ミハルと会話しているのは男ばかりだし、何かヤバイことをしているのだったら、止めてあげるのが友達だ。だからこれは友達として当然の行為なのだ。
 私はなんとかマミを説得することが出来た。
 加えて、部屋の中で積極的にミハルの携帯やノートを覗き見るような作戦を立てた。
 プライバシーの侵害とか、覗きは犯罪とかそんなことをお互い考えたが、もしミハルがもっと悪いことをしているなら、自分を捨てるようなことをしているなら、それを止める方が優先される。そう二人で決めた。
「やるしかない…… よね」
「うん」
 マミがそう言ってうなずいた。
 私は部屋を見回した。
 ミハルの持ち込んだものって……
「これだけ?」
 引っ越してきた時に置かれたダンボールが置かれていた。
「ミハルって着替えてたっけ?」
「着替えてるよ。洗濯だってしてたし、乾燥機の使い方も教えたじゃん」
「けど、これだけ?」
「う〜〜ん」
 そう言って、マミはあごに人差し指をあてた。
 私はダンボール箱の前で腕を組んだ。
 開けるのがためらわれたからだ。
 たったこれだけしかないミハルのプライベートな空間を開けてしまったら…… 一体何が残るというのか。開けたら何もかもが知れてしまう。
「どうしたの? ミハルを悪事から救うんでしょ」
「ごめん!」
 私は思い切ってダンボールを開けた。
 下着が畳んで重なっていた。その下には制服の予備、その横には部屋着の替え。
「服だけかな」
 それにダンボールいっぱいに詰められていると思っていたのにも関わらず、パッとみてもダンボールは半分程しか埋まっていない。
「もっと下を見てみよう」
 私はその下に手を入れた。
 服を丁寧に取り出して、ベッドに置いた。