そこにはプログラミングの夏合宿先が書かれていた。
 〈鳥の巣〉内のデータセンター。しかも、私がボランティアで入った空港横のデータセンターではなく、セントラルデータセンター。某システムダウンの中心地だった。
「は、入れるんですか……」
「合宿って、寝泊まりってこと?」
 オレーシャが抑えるように手を上下に振りながら、言う。
「騒がない。10分で全部答えて。時間がないのよ」
 言われるがまま、アンケートのような、問題のような、クイズのようなものを答えていった。
 計算機の基礎的な知識を答えさせるものと、合宿参加の意識の有無、食物アレルギーの有無、等々。本当にアンケートのような部分もあった。当然、個人の回答して回収されるだろう。
 全部を入力すると『送信』した。
 送信するとオレーシャの持っているタブレット側に表示される。その光をみていると、あっという間に全座席から回答が返ってきているようだった。
「今回答出来ないひとは保留を選んでね」
 オレーシャがタブレットを見ながらカウントダウンを始めた。
 まだ全員が回答していない、ということだ。
「6、5、4、3、2、1……」
 オレーシャの長いまつげが持ち上がって、見開かれた瞳に、タブレットに表示された回答終了の文字が映っていた。
「はい終了です。それではみなさん、今度はプログラミングの授業で会いましょう」
 そう言って手を振った。
 教室から出ていこうとするオレーシャを佐藤は見送りながらしめた。
「今、プログラミングの授業と言っていたけど、オレーシャは今後副担任として時々ホームルームとか参加するのでよろしく」
 オレーシャが扉をしめた。
「さっきのアンケートなんだが、合宿先が〈鳥の巣〉内なんでな、両親にちゃんと確認して欲しい。申し訳ないが、さっきのアンケートに書いてあった通り、学校側は〈鳥の巣〉内での安全を保証出来ない。覚悟のある人間だけで行ってくれ」
「覚悟って……」
「……」
「先生、何言ってるのかわかってんのかよ」
 確かにさっきのアンケートに書いてあった。
 もっと細かい内容が後でメールで送られてくるらしい。
 だとしても、内容が180度変わっているわけもなく、同じような内容をもっと細かく抜けなく記載しているだけだろう。
「最も人手が必要なところで、国も学校もこのプロジェクトに期待しているんだそうだ」
「答えになってねぇよ」
「学校は安全を保証出来ない。けれど可能な者は応募して欲しい。それだけだ」
「……」
 皆は呆れ顔だった。
 誰がどう考えてもそこは安全ではないが、学校も国も行け、と言っているのだ。
 佐藤先生は続けて事務的な内容を幾つか説明してホームルームを終えた。

 授業の合間も、私はずっと考えていた。
 もう一度〈鳥の巣〉に入れるチャンスが来た。
 あの中に入れば、もしかしたら〈某システムダウン〉の時の、空港の出来事の後のが思い出せるかもしれない。
 それに加え〈扉〉の支配者を名乗る集団について、何か分かるかもしれないかった。
 〈扉〉の支配者が〈転送者〉を操れるのだとしたら、〈某システムダウン〉の首謀者…… じゃないにしろ、大きく関わっている集団に違いない。
 私は自分の過去を知ると同じくらい、〈某システムダウン〉への興味があった。
 放課後、私は職員室に行って確認することにした。
「マミ、ごめん私……」
「用事があるから先に帰っていて」
 ミハルが先にそう言った。
「う、うん。気をつけてね」
 マミがそう答えると、私を肘でつついてきた。
「(やるんでしょ)」
「(ごめん、そのことなんだけど)」
「……」
 ミハルはスタスタと教室を出ていった。
「なに! やるって言ったじゃん」
「やるから。ちょっと先にマミ一人で尾行してて」
「え〜 無理だよ〜」
「ちょっと先生に合宿の話し確認してくるだけだから、お願い」
「合宿?」
 マミが何か考えているようだった。
「もしかして、行く気?」
「……可能なら」
 そう言って私はうなずいた。
「分かったよ。行き先はメッセンジャーみといてね。後、神代さんには話しとくから、かならず変装しといてよ」