この変装は明らかに失敗だ。
 これが私だとは分からないかもしれないが、こんな精神状態では冷静にミハルの後をつけることなんて出来ない。
 街の駅にそろそろつくだろう、と思い、スマフォを開いてマミのメッセージを見た。
『佐津間と一緒にバス乗り場で並んでる』
「えっ?」
 思わず声に出してしまった。
 バスの車内の視線を集めてしまった。
 私は書き込んだ。
『こっちももうすぐ、駅だよ。どこ行きのバス?』
『待ってたよ〜〜 早くきて〜〜 バスは、団地行きのバスね』
 団地? 佐津間と二人で何をしようというのか。
 両親が団地に住んでるのか? お嬢さんとお付き合いしている者です、とか。私、佐津間と付き合っているんだ、とか親に話すのだろうか?
 私は頭が疑問でいっぱいになった。
 乗っていたバスが駅に着くと、私はその団地行きバスの乗り場を調べて、足早に向かった。通話をしてしまったらマミだ、と気付かれてしまう。メッセージアプリでやりとりしていると、もうバスは着いて、乗り込み始めているらしかった。
 乗り場は駅の反対側。
 急いでエスカレータを登り、駅を抜け、また急いで駆け下りた。
 変にギリギリにバスに着いて、悪目立ちしても尾行がバレてしまう。
 バスを見つけて可能な限りの早足であるいた。
 バスが発車する数秒前に乗り込むことが出来た。
「(げっ!)」
 思わず声が出そうになった。
 目の前に私服の佐津間がいたからだった。
 私は目線が合わないよう、スマフォに夢中なフリをした。
 バスのドアが閉まって発車した。
『マミ、どこに座っているの?』
『後ろ、後ろ。右後ろ』
 ゆっくりと向き直ると、そこにマミが座っていた。
 思わず話しかけそうになったが、声がきかれたらバレてしまう。
 私はマミをスルーして後方の椅子の方へ行き、聞き耳をたてた。
『ここからだとさすがに聞こえない』
『こっちからでも聞こえないよ。多分、口動いてないから、何も話してないよ』
『どこに行くとかは分からないの?』
『バスの車内アナウンス聞くと、途中にこのバス会社が作ったショッピングモールがあるみたい。きっとみんなそこに行くのよ』
 私は周りを見渡した。
 ショッピングモールに行く、という感じには見受けられない。
 しかし、平日だ。ショッピングモールは普通は土日とかに行くものだろう。
 いくつか、バス停を通りすぎると、そのショッピングモール前、という名のバス停がアナウンスされた。瞬間に停車のボタンが押された。
『ミハル達が押した?』
『押してはいないみたい』
 バスはゆっくり減速し、バス停車用に充分スペースをとった場所に入っていった。
 すぐ奥に、ショッピングモールのロゴタイプが入ったゲートがあった。
 バスが止まると、佐津間がくるっときびすを返して、出入口へ進んだ。
 ミハルは佐津間の袖をつまむように引っ張って、離れないようについてバスを降りた。一人置いてマミが続き、更に二人間にあって、私がバスを降りた。
 マミがチラッとこっちを向いて、私も急いで追い付いた。
 少し、ミハル達と距離を取ったところで、マミが口を開いた。
「(なに、その胸!)」
 距離があるとは言え、普通に声をだして気付かれてもいけないので、小さい声でそう言った。
 私は顔が熱くなった。
「(この胸にするまで大変だったのよ)」
「(そうじゃなくて、変に目立っちゃうじゃない)」
「(そうだね…… 私もバス乗ってから気がついた)」
「(乗る前から分かるでしょ…… もう、神代さん、自分の趣味に正直すぎるよ)」
 ショッピングモールのエスカレーターに乗って、フロアを上がっていった。
 ミハル達はどこを目指しているのだろう。
「(あ…… あそこ)」
「(えっ、あれって木場田?)」
 ショッピングモール側には木場田と鶴田が待っていた。ミハル達と合流して歩き始めた。
 マミが肘で突っつきながら言った。
「(佐津間と二人っきり、じゃなくて安心した?)」
「(別に、佐津間とか興味ないし)」
 マミは佐津間とくっつけたがっているのか、からかいたいだけなのか、佐津間のことでいじってくる。
 はっきり言ってしまおうか、私はマミにしか興味がないって。
「(あっ、止まって止まって)」