マミが突然立ち止まったので、私はその背中にガッツリぶつかってしまった。
「(イテテテ……)」
 鼻を強打した。
「(大丈夫? キミコ)」
「(なんで急に止まるの)」
「(店に入ったみたい)」
 見ると、入っていったのはランジェリーショップだった。
 木場田は堂々とハンガーにつるしたまま胸に当ててみたりしている。
 佐津間は顔を真っ赤にしながら、ミハルの横で一緒に鏡を見ている。
「(な、何やってるの?)」
 マミは普通にブラをひとつ手にとり眺めながら答えた。
「ショッピング?」
「(そうじゃなくて、連中だよ)」
「お客様でしたら、奥のコーナーにございますよ。よろしければ」
「?」
 店員が後ろから微笑みかけている。
「(え、私、私はここで結構です)」
「結構肩とかこりませんか?」
「ですから……」
「(声、大きいよ)」
「ね? 一度みてみませんか? お友達もご一緒に」
 店員のスマイルに気圧されてマミと私は奥の『大きいサイズコーナー』につれていかれた。大きいから、色が濃くて、しまって見えるものはどうですか、とか、キツくないのに大きく揺れないブラとかを勧めてきた。
「(マミ、どうしよう?)」
「(えっ、キミコ、これ買うの?)」
「(違う違う、どうやって店員の口撃をかわせばいいの? 巨乳の知識なんてないんだけど)」
「(だったら、本当の胸を見せるか、値札をじっと見て、無理だ〜とか言ったら)」
 店員の勧めてくる模様がバリバリについた濃いピンクのブラの値札をじっと見た。
「……ちょっと無理かな?」
「!」
「失礼しました、もうワンサイズ大きいものを持ってきます」
「(ねぇ、どうしよう)」
「(立ち去るのみよ)」
「(すみません、また来ますね〜)」
 店員が悔しさをにじませた笑顔を作った。
「またいらしてくださいね」
 店員は去り際に店のカードを渡してきた。
『サイズ揃えに自信あり』
 あ〜 完全に『巨乳過ぎて困っている女』だと思われた。
 ミハル達はランジェリーショップを出て、ショッピングモールの中心の方へ向かった。
 すれ違う人の数が少なくて、追跡がバレるのではないかと、少し怖くなる。
「(どうしよう、こっちの通路から回り込まないと、まるでつけてるみたいじゃない?)」
「(もっと近くまで近寄ったりしたけど、大丈夫だったよ)」
「(マミ一人ならそうかもしれないけど……)」
「(わかった。そっちから回ってみよう)」
 ミハル達の後ろを離れ、右の通路を回ってから、また合流する方を選んだ。
 分岐した反対側で、ミハル達が靴屋に寄ったようだったが、店の見失うほど複雑な構造ではなかったため救われた。
 マミが私の方を見て言った。
「(それにしても)」
「(なに?)」
「(視線が凄いわね。男の人って、あんなに露骨に胸見てくんのね)」
「(もうやだ、突然何言うのよ)」
「(私のと比べてる人もいるし、ニヤってするキモいのもいた)」
 ほおが熱くなった。
 自分自身の胸をみてくる恥ずかしさと、同時に、マミの胸をみる男に怒りも湧いてきた。
「(なんかこっちもジロジロみてやろうか、と思うよね。どう思うか分からせたいよね)」
「(男の人は平気よ。俺のコレを欲しがってるのか、って思うらしいもん)」
「(キモ…… それ、マジ?)」
 佐津間でそれを想像してゾッとした。
「(み…… みて)」
「(うわ! 鳥肌?)」
「(自分でもビックリした)」
 本当に男はそんなことを思うのだろうか、そうだとしたら理解し難い。性別には超えられない大きな壁があるとしか思えない。
「!」
「(いない! キミコ、見失っちゃった)」
 マミと顔を見合わせて、うなずいた。
「(お互いバラバラに探して、メッセージアプリで合流しよう)」
 マミが奥へと探しに入り、私は元来た方に戻ることにした。