「ねぇ、どうしよう、どうしたら楽になるの」
「……」
 もしかしたら、サラシを外せば……
「(サラシを外せば…… もしかしたら)」
「(えっ、サラシって?)」
「(胸を盛るのに、本当の胸の上にサラシを巻いたの)」
「(それが苦しい原因よ。外そう)」
「(はずしたらもう一度は付けれないよ…… そうだとノーブラになっちゃう)」
 私は泣きたくなった。
「(自分の下着を持ってきてないの?)」
 私はうなずいた。こういう時の為に、着替えも持ってくれば良かった、と後悔した。
「(あっ、さっきのあのお店で買ってくる。キミコのトップとアンダー教えてよ)」
 モゴモゴとマミの耳元にささやいた。
「う、うん、なるほど。買ってくるから、それに着替えよう」
「け、けど…… どこで」
「そうか…… お手洗いとかじゃ?」
「(問題はサラシなのよ)」
 マミが真剣な表情でお財布の中身を確認した。そして、私のお金もたずねてきた。それを答えると計算しているようだった。
「緊急事態だからしかたないよね。けど、後で少し払ってね……」
「う、うん。どうするの?」
「とにかく、後は任せて。まずはブラ買ってくるね」



 マミと私は部屋にいた。
 私がシャツを脱ぎ始めると、マミは私の後ろに回った。
「なにこれ、こんな大きいブラあるのね?」
 マミが私の背中のホックをはずして、偽乳用ブラを取った。
「うわっ、これなに? これが、シリコン?」
 肌色のビニールで包んだ大きな肉まんのようなシリコンボールを二つ、マミが引っ張って胸から外した。
「柔らかいし、なんか暖かい。リアルなおっぱいだわ」
 外れたところの、殆ど起伏のない、本当の胸のあたりをジロジロと見ていた。
 ぐるっと、一通りみて、マミはまた後ろに回った。
「サラシも、本当にぎゅうぎゅうに巻いているのね」
 マミは何を考えたのか、そこで黙ってしまった。
「……キミコ、ちょっとこれ見て」
 マミはスマフォに動画を表示させていた。
 それを見ていると、マミの言いたいことが分かった。
「イヤだよ、そんなの、目が回っちゃうよ」
「こんなことするチャンスないんだけど、協力してくれないの?」
「これサラシだから着物じゃないし、こんなに普通ならないでしょ?」
「じゃあ、キミコがはずしたら私に巻いてよ」
「そっちもイヤだよ」
「ケチ」
「……」
 マミはどうやら悪代官が町娘にイタズラするシーンを再現したかったらしい。
 クルクルまわってもらって『あ〜れ〜』とか言って欲しいようだった。
「じゃ、とにかくはずすわね」
「もう一度念を押しときますが、その動画みたいなことはやらないからね」
「……」
 マミは無言でサラシをはずし始めた。
「ああ…… やっぱり面倒くさいよ、キミコ、腕痛くなってきた。自分でも少し回ってよ」
 私の頭の上に外したサラシの塊を持ち上げ、くるくると回して外していた。
 サラシはまだ、だいぶ巻き付いている。
「ね、お願い、腕が痛いもん」
 マミはサラシを巻き取るのを止めた。
「……わかった。わかったけど、目がまわったら、こっちもやめるよ」
 マミはニッコリと、いや、ニヤリと笑った。
「じゃ、いきますか」
「……」
 あっ、と思った時にはマミがサラシをグイグイ引っ張っていた。
 最初の少しは自分で回ったが、後はサラシを強く引っ張られることで、コマのように回っていた。
 少し落ち着いてきたところだったのに、マミに引っ張られたサラシが、また胸を刺激し始めた。
「あっ…… あん……」
「良いではないか、良いではないか」
 マミも興が乗ったようで、どんどん引っ張って、悪代官声をだしている。
「お願い、止めて……」
「良いではないか、良いではないか」
 さっきまでなかなか終わらなかったサラシが、あっという間に巻き取られた。
 目が回って、フラフラと進むと、部屋の真ん中にあるベッドに倒れ込んだ。
「き、キミコ!」
 マミが慌てて様子をみにくる。私はうつ伏せになったまま目を閉じていた。