体を返してこっちに向いてもらおうと、肩に手をかけた。
「やっ!」
 マミの声に、私はビクッとして手を引き戻した。
 仰向けになったマミは、私の顔を見て、顔の前で手を合わせた。
「ごめん、怒ってるわけじゃないの。ごめん。ほんとごめん」
 わざとむくれた顔をしてみせた。
「キミコ。ほら」
 マミが抱き寄せてきた。
 私も腕を回して、ぎゅっと体をよせた。マミのほおと自分のほおを重ねた。すこし、足と足が絡み合った。
 足と足をすり合わせると、さっきまでの高揚した気分が戻ってくるようだった。
 ほおを重ねるのではなく、唇を重ねたい。
 本気でそう思って、マミの瞳を見つめた。
 マミも、何かを思い、こちらを見つめ返している。
 目を閉じて、唇を近づけてみる。
「キミコ、そろそろ時間よ。私、ちょっとトイレ行ってくるね」
「う、うん」
 これは拒否られたのだろうか。
 『……ちょっとトイレ行ってくるね』というマミの声が、私の頭の中で何度も繰り返され、何度もその意味を考えた。



 お金を払ってから、左右をキョロと見回し、誰も居ないことを確認して、ホテルの外に出た。私は、ミハルを尾行する為、巨乳化したのだが、その為に胸にしていた詰め物のせいで具合が悪くなってしまった。
 マミはトイレでは狭くてこれを外せないというと、すぐにこの場所へ入ることを提案した。ここは観光ホテルのような立派なものではなく、いわゆるラブホという種類のものだった。そんなホテルを使う事を思いつくなど、もしかしてマミには利用経験があるのだろうか、とも思ったが、私はあえて聞かなかった。
 ホテルを出ると少し早足でその前を離れた。
 女子同士だったから、ということと、高校生がこんなところを利用して良いのか、という背徳感からだ。
 充分な距離を移動すると、私達は立ち止まって休憩した。
 もうこの時点では、ミハル達を完全に見失ってしまっている。後はまっすぐ学校の寮に帰るしかなかったが、学校からくる駅と、寮に近い方の駅はまた違う為、どうやって乗り換えるかをスマフォで調べていた。
「ああ、こっち。こっちのバスに乗ってさ、例の新交通に乗ればいいみたい」
「マミ、新交通は大丈夫?」
「大丈夫。公子といっしょなら」
 私はマミを抱きしめた。
「ありがとう〜」
「こっちこそありがとうだよ。守ってもらったんだもん」
 ギュッと抱き返してくれたマミの胸が、私の首筋に当たる。こっちは私が付けていたような偽乳ではなく、本当の本物だ。やわらかいし、いい匂いもする。
「?」
「どうしたのマミ」
「あ、あれ」
 マミの指さす方向を見ると、一人、また一人、とホテルから出てくる。
「うちの制服じゃない??」
 私にはハッキリ見える。
 最初に鶴田が出てきて、次が佐津間。そして鶴田の誘導で木場田が出てきた。
「そうだね。あの連中だよ…… ってちょっとまって……」
「奴らやっぱりBLってこと?」
 違うよ、ミハルのことを思い出して。
「……」
「あ、キミコはBLって知らない? ボーイズラブって言ってね、男の子が男の」
 ボーイズラブはゲイを指すんじゃないんだが……
「!」
 見ていると、ミハルが出てきた。
「本当に出てきた? なんかあのホテルからかどうか、ここからじゃ怪しいね」
 私の目にはハッキリとホテルから出てきた三人
の姿が見えた。何故三人かというと、鶴田が出てきたのをみたのはマミだけだからだ。しかし、木場田を誘導していた状況からして、鶴田もホテルからでたのは間違いない。
「……そ、そうだね」
 私は朝、バスで〈転送者〉の姿をみたほど遠目が利くのだだが、今は見えないフリをすることにした。
「どうする? こっちに近づいてくるよ?」
「ここでたまたま会ったってことで」
「その前にはどこにいた事にする?」
「えっ? どうしよう。ショッピングモールしかないじゃん」
 斜向かいに見えるショッピングモールを指さした。
「何か買ったっけ?」
「買わなくてもいいでしょ? 大丈夫。お互いミハル達のことは見てない、それを貫けば」
 少し強引か、と思ったがマミのその言葉に乗ることにした。それ以外の理由は思いつかないし、ミハル達見られていたとしても、私達が変装していた時の姿だ。問題ない。
「うん。そうだね」
 しばらくして、先頭を歩いていた鶴田がこっちに気付いたようだった。
 少し接近スピードが落ちた。