私は鶴田達を向いたままそういった。
「向こうも向こうで気まずいみたいね」
「気まずいってことは、ホテルに入ったのかしら…… キミコ、佐津間くんがやられちゃったら、というか目覚めちゃったらどうする?」
「それはどうでもいいけど、ミハルが心配……」
「そ、そうよね。ミハル、まさか……」
「いや、それは考えないようにしようよ」
 ミハルは呼び出されて廊下で木場田と佐津間に挟まれていた。その時、佐津間はズボンを直す仕草している。
 次は放課後に呼び出されて男と下校した。
 そして、また次の日、ショッピングモールに木場田達と『下着コーナー』で買い物……
 この一連の流れからして、最後は『ラブホ』に寄ったに違いない、という結論になりそうだった。けれど、出てきたのが確かだとしても、中のことは一切分からない。受付の人と話をしてただけ、と言われても、確かめようのないことなのだから。
「うん、疑わないようにしよう」
 と、マミも快諾した。
「あと」
「後?」
「BLってゲイのことじゃないから。乙女のコンテンツだから」
「??」
「……あっ、忘れて。今の発言忘れて」
 木場田達が近づいてきた。
 鶴田と佐津間は何かショッピングセンターで買い物したらしく、バッグを二つ三つづつ持っていた。私達が見た時には買っている感じは無かったが……確かに上半身しか見えてなかったから、気付かなかったのかも知れない。
 鶴田が佐津間の肩を押して、私達の前に付き出した。
「よ、よう。珍しいところで会うな。それに、なんだ、その変な格好」
「変な格好って何よ。あんたたちこそ、男同士でどこに行ってたの?」
「この手提げ袋をみてそんなこと聞く? 買い物だよ買い物」
 佐津間は親指でショッピングモールの方をさした。
 紙袋に書いてあるブランド名を指さして、私は突っ込んだ。
「……女性モノを買う趣味でもあるの?」
 そこにマミが食いついてきた。
「えっ? 佐津間やっぱり目覚めちゃった?」
「ちぐあう」
 顔が真っ赤になってしまって、何を言ったか聞き取れなかった。
「?」
「……違う違う。俺たちはミハルの買い物に付き合っただけさ」
 鶴田が言い直してきた。
 だが、そうだとすると袋の数が多すぎるのが気になる。
 ミハルの家は、いっぱいお小遣いをもらえる裕福な家なのだろうか、それとも、男達が何かの代償として……
「あっ、買ったことは内緒で」
「なんで内緒?」
「あ、えっとなんつーか……(女物の下着売り場ウロウロしてたことになっちまうじゃないか)」
「佐津間、声が小さくて聞こえない」
「てめぇのババア声で耳がバカになっちまったんせいだよ」
「口が減らない男ね」
 急に鶴田が口を開いた。
「お前ら喧嘩やめろ。とにかく買い物のことは他言無用だ。それと、この買い物は全部ミハルのものだから、お前ら持ってやれよ」
「えっ?」
 見ると、ミハルも大きな袋を二つづつ両手にわけて持っている。
「俺たちは寮までは運んでやれねぇから」
 と佐津間。
「寮の近くまでは来れるでしょ?」
「だから内緒にしたい、って」
「それはあんたらの都合でしょ!」
「お願いします」
 全員が振り返った。
 ミハルが深々と頭を下げていた。
 こんな姿のミハル、はじめてみた…… 気がする。
「違うの、手伝わないって言ってるんじゃないのよ」
 私は慌ててミハルに駆け寄った。
 下からミハルの顔をのぞき込んだが、ぎゅっと一文字に結んだ口と、一点を見つめる目から気持ちを感じた。
 私は軽く背中に触れながら、
「ごめん、大丈夫、私達が持ってあげるから」
 と言うと、ミハルもこっちに寄ってきた。
「そうだよ、ミハル。困った時は私達に話して」
「まぁ、そういうことで」
 佐津間が紙袋を突き出してきた。
 私は無言でそれを受け取った。