寮に戻ると玄関で|神代(こうじろ)さんに出会った。
「あっ! (とまた後で話すわ)」
「(うん。後でそっちの部屋行くから)」
「?」
 ミハルが不思議そうな目をしてこっちを見ていた。私は半分本当のことを交えて言った。
「私服でショッピングするから、神代さんに制服を持って帰ってもらってたの」
 ミハルは特に返事をするわけでもなく、こっちの顔を見ていた。まあ、リアクションするほどの内容でもない、ということだ。
 部屋に戻ると、ミハルのベッドの横に紙袋を置いた。
「ありがとう」
 マミと私は顔を見合わせた。
「いいえ、どういたしまして」
 そもそも、ミハルが言葉を発することが少なく、ましてやそれがお礼の言葉だったりすると、驚きは何倍かに大きくなる。
「聞いてもいい? 何を買ったの」
「下着と休みに着る服。部屋着の替え」
「へぇ、そうなんだ。私達に言ってくれたら一緒にショッピング出来たのに」
「……」
「あ、ゴメン、私達と一緒じゃないほうがよかったってことだよね」
 ミハルはもう興味を失ったように、紙袋の中身を取り出して、タグを取りベッドの上に並べていた。
 マミが別のことをたずねた。
「ミハル、両親から、こんなに買えるほどのお金もらったの?」
 ミハルはキッと私達をにらむだけで、何も答えなかった。
「あ、ゴメン、っていうか、いくら使ったの?」
 もうミハルの反応はなかった。
 自分が親だとして、これだけの金額を渡すだろうか。これはミハルの自由出来るお金を超えている。おそらく、木場田や佐津間から金をもらっている。つまり…… そういうことだ。なにかの対価としてのお金なのだ。
「キミコ、ちょっと」
 ミハルが向こうを向いているのを確認してから、マミが言った。
「(食堂行こうか)」
 私はうなずいた。
「ミハル、ちょっと食堂行ってるね」
「……」



 食堂でマミと私はミハルの買い物の額が尋常でないことを確かめていた。
「大体、あそこの下着ってブランド品ばかりでいくらアウトレットって言ったって一着一万はするのよ、いくつ買ってた? 七、八、八着以上あったよね? キミコ?」
「うん」
「一袋でそれだよ、十袋あるんだから、平均が半額の四万だとしても四十万。一日に子供が使える額じゃないっしょ」
「う、うん」
「ぜったい『売り』だって。やってるよ間違いない」
「いや、まだ買い物しかみてないんだし……」
 マミはムッとした。
「キミコが先に疑った話じゃん。なんでいまさら慎重なのよ」
「それはそうね」
「佐津間が絡んでるから、疑いたくないのはわかるけどさ」
 私はその言葉でスイッチが入った。
「そんなことない。あいつが絡んでるなら、絶対酷いことになってるよ。あいつらが元締めみたいなことして、ミハルをこき使ってるんだよ」
 マミはうなずいた。
「そうだよ! 悪いのはミハルじゃなくて、元締めの佐津間の野郎なんだよ、きっと」
「大きい声で喋ってると本人に聞こえちゃうよ」
「神代さん」
 テーブルに袋を置き、私の横に座った。
「尾行相手と一緒に帰ってくるからビックリしちゃったよ」
「ま、色々あったの」
「とりあえず、着替えは渡しておくから」
「ありがとう」
 私達は神代さんにいままで見てきたことを全て話した。
「うーん、確かに怪しいよね。高校生が扱う金額じゃないし。男子も鶴田を筆頭に全員信用がおける、という訳じゃないし」
 不思議な人物の名前が出て、私は思わず聞き返した。
「鶴田?」
「だって、アイツが一番怪しくない?」
「木場田を差し置いて?」
 マミがそう言った。
「佐津間が一番怪しいでしょ? 転校して来たばっかりだし」
「キミコは単に佐津間押しなだけでしょ?」
「マミだって木場田✕鶴田とか言っているし」