「本当に佐津間をすきじゃないなら、あそこで『そんなんじゃねぇらしいから』って言わない方がいいよ」
「?」
「キミコ、ツンデレだと思われてるんだよ。男子はちょっかいに反応してくれる女子は、気があるって思っちゃうんだよ。嫌いなら無視。私も見てるとキミコが佐津間好きなのかって思っちゃうもん」
 え? あ? そう……
「わかった。そうだね、誤解されてんのかも」
 言ってくること全部無視しても平気なのかな。「席の後ろに座るのも止めた方がいいのかな?」
「佐津間が言った時は無視して、鶴田か木場田が言うまで待つのね。あるいは私が『いこうキミコ』って言うからそこまで待つ。そうすれば佐津間に答えたことにならないでしょ?」
「面倒くさいね……」
「変に相手をすると、佐津間が調子にのるんだよ。こうすれば会話出来る……って感じで。俺がこやって話しかければ白井は答えてくれるって」
 保健室の前に立った瞬間、扉が開いた。
「あら、どうかしたの?」
 メガネをかけた女性がいた。
 どうやら保健室の先生らしい。細い顔立ちと大きなフレームのメガネがアンバランスに思えた。
 白衣の下は…… 着ていないんじゃないか、と思える。いや、何も着ていないわけではないが、透けて見える部分から推測しても、つけている布の面積は大して大きくない。
「腕と背中を打ってしまって」
 私は倒れた時に打った腕を見せた。
「あら、酷い。けど、もう綺麗に包帯してあるじゃない。とにかく見てみましょうか。さ、中に入って」
 私は向かいに座って状況を正確に話した。
 だが、〈転送者〉を倒した、とは言わなかった。
「そう…… 住宅地の道ってアスファルトよね?」
 先生はメガネの右のつるをつかんで、クイッと上げた。
「包帯取ってもいいかしら」
「ええ」
 手際よく包帯を取っていく。
「消毒はしたの?」
「はい」
 すべてを巻き取って、傷口をさらしていた。
「確かに血が出たみたいね…… けれど、もうかさぶたになっている…… 取った包帯に血はにじんでいない。何か当てていた様子もない…… と」
 先生はニッコリ笑った。
「ちょっと舐めても良いかな?」
「えっ?」
 保健室をぶらぶらしていたマミも振り返った。
「傷口ってよく舐めたりしなかった? 私、ずっとそれやっててね。なんとなく分かるようになったのよ。どういうことして出来た傷だ、とか」
「本当ですか?」
「じゃ、舐めてみていい?」
「……」
 そんな霊感刑事ドラマみたいな超能力があるわけがない。私はそう思ってうなずいた。
 肘からツーっと舐めあげていった。
 傷口はもうかさぶたになっていて、しみたり痛みはなかった。
「綺麗な舌ですね」
「そう? ありがと。念の為左腕も、良い?」
 うなずくしかなかった。
 ツーっと舌を滑らせていく途中で、先生は両目を伏せたり気持ち良さそうな顔をする。
 それはゾッと背筋にくるものがある。
「な、なにか分かりました?」
「少しね。舐めて判ったわけじゃないけど……」
 まずい。
「そしたら今度は背中がみたいな。あっ、付き添いの|娘(こ)は見ちゃダメよ」
 ついたてで囲まれたベッドに行くよう、二の腕を触られた。
「マミ、待っててね」
 ついたてを動かして、回りから見えない状態になった。先生は私の制服のボタンを外し始めた。
「あっ、自分で出来ます」
「(いいのよ、やってあげる)」
 先生は顔を近づけてくると、小声でそう言った。
 上着を脱いで、後ろを向くと、そのまま後ろから先生の手がブラウスのボタンを外し始めた。
「あ、あの……」
「(心配しないでいいのよ。背中の傷をみるだけなんだから)」
 わざと吐息が掛かるような話し方をしている、そうとしか思えない。
「ほら、腕を抜いて」
 ブラウスを脱ぐと、先生がそれをカゴにいれた。
「じゃ、そこにうつ伏せになって」
 肩に軽く触れられた。
「はい」
 上履きを脱いでベッドにうつ伏せになって、先生の側に顔を向けた。