「これ神代さんとか着るの?」
 マミから衣装を受け取り、自分の体に当てて見せる。
「首相に代わってお仕置きよ!」
 プリクラの決めポーズを見せた。
「……着てみたりすると思うか?」
「いや……」
「悪いけど」
「なら最初から聞くなよな……」
 神代さんは肩を落とした。
「まあ、これで街中をあるけばちびっ子の注目の的だぞ。これも貸出OK範囲だからな」
「私はサイズ的に無理。キミコなら着れんじゃん?」
「いや…… 『とうのたった魔法少女』はイヤ」
「何それ?」
 という感じに、後いくつか服を見ている内に予鈴が鳴って教室に戻った。
 午後の授業が終わると、ミハルはすぐに口を開いた。
「用があるから。先に帰って」
「……そ、そう。どこに行くの」
「……」
「館山、時間になったら来いよ」
 佐津間がそう言うと、ミハルはうなずいた。
 そのまま佐津間は教室を出ていった。
「あいつと一緒なの?」
 ミハルは無言でうなずいた。
「どこに行くの」
「……」
 ミハルは視線を逸らした。
 マミがミハルの肩に手を置いて言った。
「助けが必要なら言って。先生に知れたくないことなら秘密も守るよ」
 するとミハルは私達を睨みつけた。
「あなた達に何が出来るの」
「!」
 確かに学生が出来ることなんて、限界があることは確かだ。マミも困った顔で私を見るだけだった。私達に出来なくても、鬼塚刑事とかに頼めばなんとかなるかも…… いや、そういうことじゃないんだろう。
 考えても考えてもミハルに胸を張って答えるだけの答えは出てこなかった。
「さよなら」
 そう言ってミハルは教室を出ていってしまった。
 ここでしっかりとミハルを説得できれば、もしかしたら止められたかもしれないのに。
 言葉を持っていなかった自分が悔しかった。
 しかし、ミハルが何か悪いことをしていると決まったわけでもない。次の行動を起こさねば。
「マミは先に変装してて。追い付いたら私と交代して」
「うん」
 私はマミと別れてミハルを追った。
 ほどなくミハルを見つけ、気付かれないように後ろをついていった。
 するとミハルは教師に声をかけられた。その男性教師の顔は見えたが、私には誰だか思い出せない。おそらく別の学年の担当なのだ
 ミハルはその男性教師に耳打ちされた。
 ミハルは手で何か数値を示すと、教師はうなずいた。そしてタブレットで何か操作をしてから、ミハルの背中を押すように、面談室へ入った。
「えっ……」
 追いかけて、談話室の前で耳をつけてでも中の会話をきくべきか悩んだ。



『学校でこんなことしていいのかしら』
 ミハルはブラウスのボタンをはずしながら、男性教師に言った。
『それがたまらないんじゃないか。面談室はプライバシーを守る為の部屋だから、録画も録音もされないやるには最高の部屋だ』
 ミハルはソファーに横になって目を閉じる。
『お望みの通り、待っていれば良いのかしら』
『高校教師になった一番の目的を今日果たせるとは思わなかった』
『JKを抱く…… そんなことが目的で高校教師になったの』
 教師はミハルの上に体を重ねていく。
『|他人(ひと)には言うなよ』



「|白井(しろい)何やってんだ?」
 担任の佐藤の声で、私は妄想から現実に引き戻された。
 佐藤は親指で面談室をさして言った。
「誰か入ってるのか?」
「えっ…… そうですね。使用中ってなっているから、誰かいるんじゃないですかね?」
「ここの出入りは校長しか分からない。先生の名前は分かるが、どんな生徒と入ったとかは分からない」
 えっ、本当にそういう行為用には都合がいいんじゃないか……
「それはセキュリティ上の穴なんじゃ」
「それは俺の決めることじゃない」
 佐藤は私の肩に手を置いて、ぐるっと向きを変えさせた。