見ちゃいけない、という意識から、素早く背もたれに足を掛けて梁に上がろうとした。
「ちょっと待て」
 足を引っ張られた。
 ソファーに落とされた瞬間、私は輪姦される、と思って拳を握りこんだ。
「よく見れば白井じゃねぇか」
「お前、何してんだ」
 聞いた声が二人。
 よく見ると、男の一人が木場田で…… もう一人は鶴田だった。
「あんた達こそこんなところを利用してるってどういうこと?」
「しーっ」
 口に指を当てられた。
「木更津が連れ込まれた」
「見たの?」
 鶴田がうなずく。
「どこか知ってる?」
「隣だよ」
 私は慌てて、這い上がろうとすると、また足を引っ張られた。
「慌てるな」
「場所がわかってるなら、慌ててよ。鶴田も黙ってないで。それとも、ほっとく気?」
「!」
 上から視線を感じる。
「誰?」
 もしかしたら、さっき足を引っ張ったヤツかもしれない。
「……」
 すると、木場田の横にするっと落ちてきた。
「館山!」
「ミハル!」
「あっちは見終わったの?」
 ミハルはうなずいた。
「隣にマミがいるんだって」
「……」
 ミハルは見えない壁を見通すかのように、睨みつけた。
「木場田、なんで隣にいるのに助けに行かないの?」
「隣は女の子どうしだ。何が起こるわけでもあるまい」
「女の子同士だってヤバイに決まってんでしょ? あんた達だって男同士で何やってたんだか」
「はぁ? 俺と鶴田はそんな関係じゃないぞ」
「店の人はそう思ってないでしょうね」
「とにかく! まだ何かしている様子はない」
「覗いてたの?」
「……まあ、そうだ」
 木場田はうつむいた。悪いことをした、という思いはあるようだ。
「ミハル?」
 テーブルの上に立ち上がり、木場田と私の前を抜けて、マミのいるブロックを上からのぞこうとした。
 木場田も鶴田もミハルから顔をそむけた。
「なんで私がすると足を引っ張るのにミハルの時はOKなの?」
「館山はスカートはいているからな。見上げたら見えちゃうだろ?」
 木場田がうつむいたまま、そう言った。
 ミハルが振り返って、するっと私の横に降りてきた。そして頭を抑えている。苦しそうな表情だ。
「……赤黒い、カチューシャ」
「?」
 何を言っているのか分からなかった。
 ミハルのカチューシャの事なのだろうか?
「カチューシャがどうしたの?」
 この赤黒いカチューシャが、緊箍児(きんこじ)のようにミハルの頭を締め付けるのだろうか?
 ミハルはマミがいる側のブロックを指さした。
「どういうこと?」
「ちょっと確かめるか」
 木場田がスマフォを取り出しながら言うと、鶴田もスマフォを取り出して何か操作している。
 鶴田はそのままスマフォをカーテンの下から、隣ブロックの方へ伸ばした。
 鶴田は、木場田のスマフォを指さす。
「えっと、これってテレビ電話?」
「そうだ」
「テレビ電話を使って隣を覗いてたの?」
「木更津が無事かどうかを確かめているのだ」
「常習的にやってんじゃないの?」
「それより、見ろ。赤黒のカチューシャだ」
「あっ!」
 赤黒のカチューシャというより、マミの向かいに座っている人物に驚いてしまった。
 赤黒いカチューシャだから、というだけではない。
 顔つきも体もミハル本人のようなのだ。