私が降りるのをやめると、ミハルのそっくりさんはマミの青赤のピッタリ体にフィットした素材の上から、胸の形を確認するように手を動かし始めた。
「!」
 そうだ、あのカチューシャの能力かもしれない。
 ミハルが赤黒のカチューシャをして、私とマミと三人でお風呂に入った時のことを思い出した。
 あの時も、まるでこっちの考えが読まれているようだった。
 だから、今も、あのミハルのそっくりさんに、やって欲しいこと、やって欲しくないこと、そういうことが読まれてしまうのだ。
 こっちが降りようとすれば、考えを読み取り、即座にボタンを押すだろう。
 何が目的かは分からないが、このままにはしておけない。最悪、マミがカチューシャでコントロールされ、連れ去られてしまうだろう。
「!」
 後ろをみると、ミハルが私の足をつかんでいた。
「な、何するの」
 梁の上を引きずられる。
 ミハルは私の肩をつかんで仰向けにしてきた。
「こ、怖い、落ちる……」
 ミハルは何も喋らない。
「……」
「だから、何?」
 私の言葉には全く反応なく、そのままするっと体を重ねてきた。
 細い梁に背中を預け、落ちないようにバランスをとるので精一杯だった。
「ミハル、聞いてる?」
 私の上に馬乗りになったミハルは、上着を脱ぎ始めた。
「えっ、だから、ちょっと……」
 ミハルはちらっと下を指差した。
「……」
 下をみると、マミが睨みつけている。
 ただ、同じ睨むにしては、いつもの表情ではない。動物のような、ただ敵意だけがむき出しになっているかのようだった。
「マミ!」
 私は下の席に向かって手を伸ばした。
 引っ張り上げる気があるわけでも、何をするつもりでもなかった。
 理由もなく、ただ触れたかった。
「マミ!」
 瞳の色が違って見えるほど、表情が野獣のようだった。カチューシャに縛られて意識を失っているのかもしれない。
「えっ?」
 ミハルは上半身ブラだけの姿で、私の服をまくりあげるようにまさぐってきた。私の素肌が見えると、そこに唇をあててくる。
「ミハル、やめ……」
「グァ……」
 下の席から、人の声ではない、鳴き声のような音が聞こえてきた。
 ミハルのそっくりさんが、マミの肩を抑えようとするが、マミはそれを振り払ってこちらに上がってこようとした。
「グァエセ……」
 ミハルはマミに引っ張られて、席に転げ落ちてしまった。
 私は反対側の縁に指をかけてなんとか落ちるのを免れた。
「何事ですか?」
 騒ぎになってしまった。
「鶴田! お願い。時間を稼いで!」
 隣の席で上を見上げていた二人を頼った。
 店員はマミとミハルのそっくりさんがいる席に駆けつけようとする。
「何がありました?」
 そこへ木場田が飛び出して言った。
「聞いてくれよ店員さん、コイツが酷いこと言うんだ。俺のことをただデカイだけだって」
 鶴田もカーテンを手で払うと出ていった。
「俺も、もう帰るぜ」
 私はそれを確認して、ミハルの落ちたボックスへ飛び降りた。
「こんなやつと一緒にいれるか、会計は別だ」
「店員さん、早くここから出たい。こんなヤツと一緒に居れない」
 カーテンの外では木場田と鶴田が店員を引き止めている。
 ミハルの体を受け止めるようにして、マミは横になってしまい、ミハルのそっくりさんはミハルと手を合わせて組み合っている。
「マミのカチューシャを取って!」
「判った」
 私はテーブルの上を回って、マミの頭側へ回ろうとした。
「!」
「待ちなさい」
 ミハルのそっくりさんが、手で私の足を引っ掛けた。