「い、今?」
「私も百葉高校に転校するのよ」
「て、転校って……」
 その時、ドアが開いた。
「ミハルっ! どこ行ってたの?」
「おしっこ」
「そんな言い方しないで! おトイレでしょ。じゃなくて、チアキが百葉高校って……」
 私の言ったことを無視するかのように、ミハルは戸口のダンボールを押し、部屋にいれようとしている。
「あの…… 聞いてる?」
「手伝って」
「……う、うん」
 二人でダンボールを持ち上げて、部屋の中に運び込む。チアキは気にも止めない様子で、机で教科書を広げている。
「私がいない間にどういう話になったの?」
「チアキは百葉に転校してくるんだみたい」
「それはわかったけど」
 私はチアキを振り返ってから、小声で言う。
「(マミをさらおうとしたのよ)」
「結果的にここにいるからいいじゃない」
「良いわけないでしょ」
「やってるテキストは変わらないのね」
 チアキがこちらを振り返って言った。
「百葉高校の卒業生がずいぶん評判良いから、もっと高度なことやってるのかと思ってた」
 私はあたりさわりのないよう、学校のパンフレットレベルの回答をする。
「テキストを中心にはしてるけど、タブレットの配信と、校外学習があるからなのかもね……」
「まあ、それにしたって大したことはなさそうね」
 私はチアキの言葉を聞き流して、マミのようすをみた。上のベッドには担ぎ上げれない為、マミは下段の私のベッドに寝かしていた。
「前の学校の方が高度だった」
 ミハルはダンボールを開封して、黙々と中の確認をしていた。
 しかたなく、チアキに返事をする。
「そうなんだ」
「それにもっと先の項目をやっているし」
「へえ」
「これが時間割? 科目も時間数も少ないのね。これだけ少なければ余裕ね」
「そうだね」
 マミの様子は汗はかいているが、熱がある、というほどではない。目覚めないのが心配だが、しっかり呼吸もしている。不自然な感じはない。
「百葉高校ってバカの集まりね」
「ふぅん」
「あんたバカでしょ? マヌケなんでしょ?」
「そうだね」
「ちょっと!」
 チアキが教科書で私の頭を叩いた。
「聞いてんの?」
 さすがに適当に返事をしすぎた。
「聞いてないよ」
「聞きなさいよ」
「あなたの方が面倒くさいわね」
「私のカチューシャどこやったの?」
「知らないよ」
 んっ、と思って、ポーチの紐を握ってしまう。
「何、そのポーチ」
「い、いいじゃない」
「ポーチの紐よ。普通は胸のない子でも強調されるもんなのに……あなたは」
「い、いいじゃない。ほっといてよ」
 ポーチの紐ではなく、胸を隠すようにギュッと腕をたたんだ。
「そういうあんたは胸あんの?」
 チアキは胸のしたを抑えて、突き出してみせた。
 はからなくても、見た瞬間にわかる。
「ミハル、助けて」
「客観性が必要ね」
 そう言うと、ミハルはガサガサとダンボール内を探し始めた。
「あった」
「メジャー怖いメジャー怖い…… メジャーは嫌い」
「キミコのサイズははからないから大丈夫」
 端から勝負にならないということか。
 私はメジャーを渡された。
 手を上げたミハルの後ろにメジャーを回すと、顔でミハルの胸を押し上げてしまった。
 やわらかい胸の膨らみ。