食事を片付け、トレイを持って立ち上がった。
「あいつに拒否する権利はないの」
「つよ気ね」
 そう言いながらマミは微笑んでいた。
 部屋に戻ると、チアキは起きていた。それどころか、ミハルのダンボールの中から、新品の制服一式を取り出してミハルのベッドの上に並べていた。
「ミハル、これ売ってちょうだい」
「……」
「あんたもすぐにこれが必要になるわけじゃないんでしょ?」
「……」
「面倒くさいわね。私もこれを来て百葉高校へ行くのよ」
「何故?」
「いいから売りなさい。じゃなかったら、同じものを買って返すから譲りなさい」
「同じこと」
「じゃあ良いわね」
 チアキは服を着替え始めた。
「分かっているとは思うけど、制服を着ていれば良いってもんじゃないのよ?」
 そう言って、私はチアキ何か誤解してないか確かめた。
「私をバカだと思ってるの?」
「じゃあなんで制服を」
「後で教えたげる」
 何を隠しているのか得意げに微笑むと、一つ一つ確認しながら服を着替えていった。
 私達もつられて着替え始めた。
 全員が着替え終わると、部屋を出て寮の前の車回しへでた。
 マイクロバスがやってきて、クラスの女子が乗り込み始めた。
「(チアキ、本当に大丈夫なの?)」
 一緒に並んでバスに乗り込んでしまった。
 何人かはチアキに気付いたように振り返った。
 しかし気付いた連中は誰一人、『あんた誰?』とか『不審者が乗ってきた』とは言わなかった。
 私達と馴れ馴れしくはなしているところを見て、別のクラスの人間がやむなく乗ってきた、とかそいう理解をしてしまったのではないかと思う。
「(昨日の女じゃないか)」
 鶴田が慌てた感じに、耳打ちしてきた。
 クラスメイトに聞こえても問題なので、小さい声で返す。
「(学校に行ってみるみたいよ)」
「(誘拐じゃないか)」
「(本人の意思なんだから)」
「(知らねぇぞ)」
 鶴田と話していると佐津間が、苦い顔をしてこちらを見ていた。
 佐津間に向かって『何よっ』と言おうとした時、マミの言葉が頭をよぎった。
 マミが言った通りにしないと、佐津間にツンデレと勘違いされてしまう。
 それが永遠にツンだけなのだとしても、男はそう考えないというのだ。
「……」
 佐津間の態度があまりに腹立たしいから、何か一言いってやりたくなるが、ぐっとこらえた。
「良い席じゃない。男はチビ、|強面(こわもて)、デカ番長って感じてパッとしないけど……」
 鶴田が言った。
「チビだと!」
 佐津間は自分が睨み付けていることを分かっていないようだった。
「?」
 木場田はデカイことを自覚しているようだった。
「なんだデカ番長って?」
「一人以外、わかってるじゃない」
「?」
 佐津間のすっとぼけた顔を見てイラッとした。
「あんたよ」
「?」
「こわもてはあんた」
 チアキは佐津間の目の前に指を立てた。
 よかったこれだけ明確に言えば分かるだろう。
「はあ…… こわもてですか」
 何か突っ込みたくてイライラした。しかし、ツンデレになってしまうから我慢した。
「それよりあんた誰?」
 バスに乗ってここまで、全員が気になっていたけれど誰も突っ込まなかった事実をくちにするなんて。最悪。どんだけ空気読めない男なんだろう。
 私のイライラが頂点に達した。
「佐津間、あんたバカじゃないの?」
「なんでいきなりバカ呼ばわりされるんだよ」
「空気読みなさいっての」
「どんな空気だよ、読んでみろよ」
「口に出したらいけないから、そういう言い方するんでしょ。だからバカ呼ばわりしたのよ」